ドイツ・工芸品の旅 その4「ハーメルンの笛吹き男」
1996年の夏、フランクフルトの南・グリム兄弟生誕の地「ハーナウ」から「ブレーメン」までを結ぶメルヘン街道を旅し、途中ハーメルンに立ち寄りました。グリム童話「ハーメルンの笛吹男」の話で知られている所です。この物語は1284年、実際に起こった集団子供行方不明事件を元に作られた、とされています。その物語は、こういうものです。
ある日派手な服を着て、銀の笛をもった男が村にやってきて、当時大発生したネズミ退治をしました。だけど約束した報酬を村人が支払わなかった為、怒った男は姿を消しました。そして6月26日聖ヨハネ祭の日、男は仕返をしに再び村に現れました。笛を吹きながら村を歩き回り、子供達はその笛の音につられ城壁の外へ出ていき二度と戻ってこなかった、というお話。
ハーメルンの市庁舎の壁にはいまでも130人の子供たちが笛吹男に連れ去られた出来事が彫られています。
お話自体は暗い内容ですがグリム童話の中でも有名な話で、オストハイマー社やエミール・ヘルビック、ヴェント&キューンは木彫、バベット・シュバイツァーは錫細工で製品化していますね。また事実解明の為の研究は今日もすすめられ、浜本隆志氏は『モノが語るドイツ精神』(新潮選書)で「笛吹き男の笛の音には魔的な呪縛力があるとされていた」なんてちょっとドキリとするようなことを書いています。
さて、ハーメルンでは毎年夏休み期間中、街の真ん中の広場で村人が演じる「ハーメルンと笛吹き男」の野外劇を無料で見ることができます。13世紀の衣装に身を包みかなり本格的に演じられ、なかなか見ごたえのある劇です。夏休みということもあり地元の人に加えて観光客も多く見物しています。そして前座?として事前にエントリーしておけば誰でも舞台に立つことが可能です。一番多い出しものはコーラス。ただし大抵はおばあちゃま達ですが…。
(治井)