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その6 行ってみたいな〜キリスト受難劇・イン・オーバーアマガウ

2007年2月、百町森スタッフ佐々木がニュルンベルグのおもちゃメッセ会場で、素敵なハンペルマンを飾っているブースを見つけました。柿田・相沢を呼びとめ三人で入ったブースは『シュニュールカスペール』といい、職人というよりアーチストと呼ぶほうがしっくりくる50才代のオジサマ三人で営む、大人向けのハンペルマンを作る工房です。南ドイツのオーバーアマガウというところで製作活動しています。

百町森に来る前の私の職場は、兵庫県にある「有馬玩具博物館」です。実はそこで収蔵品として彼等のハンペルマンを展示していました。『動き』をテーマしたフロアーで、企画展として数十体を展示したこともあります。

写真は2003年2月彼等の工房を訪れた際に写したもので、2月なのにクリスマスツリーと、つきささった鋸で、とてもシャレた?ウインドウディスプレイでした。オーバーアマガウは彼等のようなアーチストたちが実は沢山住んでるところですが、あまり日本人にはなじみのない地名です。でもネットで調べてみると、これが結構出てくるんですよね〜。内容は『キリスト受難劇』『メルヘンなフラスコ壁画』など…ただ木工が盛んなことはほとんど出てきません。

何年前か忘れましたが、オーバーアマガウで上演される受難劇を紹介する番組を偶然NHKで見ました。大きな野外ステージで当時の衣装を身に付けた役者たちが演じており、大きな十字架を引きながらよろよろ歩くイエスのシーンが印象的でした。

受難劇の始まりはこうです。

1600年代始め、ペストがオーバーアマガウで猛威を奮いました。そして1634年、犠牲者を弔った墓地の上に作られた舞台で、受難・死・復活をテーマに上演されました。その後も舞台は上演され続け(ヒトラーにより休演した時期もありましたが)、現在は10年に一度、5月21日から10月8日まで、120回上演されています。途中休憩をはさむものの6時間もの長いお芝居に6才から90才までの村人が総勢約1860人出演します。

村人が芝居のキャストなんですが、芝居の出演がきまると男性は一つだけ守らないといけないことがあります。それは「一年間、髭を剃ってはいけない」というものです。芝居の演出上、必要なことらしく、警察官であっても学校の先生であっても上演されるまでの1年間は髭を剃ってはいけないそうで、配役が決定された時に契約書の紙面に書かれています。

1999年新しく野外ステージが完成し、客席には屋根が付き、ステージ上は電動で屋根が開閉するようになりました。ステージ裏手の部屋に保管されている衣装や小道具を見せていただき古い時代にタイムスリップしたような気持ちになり、「あ〜テレビで見たのと同じ衣装だ!」と感激しました。

約370年の歴史がある芝居を村人達が営んでいるなんて他にはないでしょう。そして、この芝居を見るために遠路はるばるやってきた敬虔なキリスト教徒は、帰りにお土産としてイエスやマリアの像や生誕シーン(クリッぺ)を表した彫刻をを買って帰ったのです。いつしか木工職人が村に住むようになり、やがて彫刻以外の木工をやる職人たちが集まる村になりました。人物を彫る職人、そして「シュニュールカスパール」のようなハンペルマンを作るアーチスト集団などが暮らすオーバーアマガウ。村外れにはあかずきんちゃんやヘンゼルとグレーテルの壁画があったり、夏はベランダからゼラニウムのプランターがずらりとならぶ愛らしい村です。

次の受難劇は2010年。行けるといいなぁ…

「シュニュールカスペール」工房のハンペルマンは間も無くアップする予定です。現在佐々木がドイツ語の辞書を片手に情報収集にがんばっていますので、いましばらくお待ちください。

(治井)