その11:初めまして、エルツさん
1994年2月。ニュルンベルクの街で、一人ショッピングを楽しんでいた私。
街の中心の聖ローレンツ教会の前を通りすぎ、カイザーブルグ城へと続く道の左手。
そこに、あの「店」はありました。
店に、一歩足を入れたとたん、「きゃー!何!!この店!どれもこれも、小さくてかわいいやん!そうや、私って小さいもんが、好きやった!(関西弁)」と、独り言。
初めて見る世界。小さいけれど、一つ一つがとても丁寧に作られ、「好きな物、みーつけたっ!」って感じ。
ニュルンベルグのそのかわいらしい店は「エルツ山地の工芸品店」だったのです。
小さな店でしたが、1時間はいたでしょうか。指で回す小さなメリーゴーラウンドにやじろべえ。ライフェンドレーンで作られた動物親子のミニチュアなど数点を購入。年配の女性のにこやかなレジ、クリスマスピラミッドのポストカードのおまけ付き。もう感激!「だんけしぇ〜ん」と日本語丸出しのドイツ語でお礼をいうのが精一杯でした。
購入した物を、一緒に行った方に見せたら「いい物を見つけたね。これはザイフェン村という所で作られたドイツの工芸品だよ。」とのこと。その時初めて私は「ザイフェン」「エルツ」の存在を知りました。
その後、ニュルンベルグに行くたび、いつもこの店を探していたのですが、どうしてもみつかりません。それもそのはず。いつのまにか、店は撤退。「マジック用品の店」になっていました。あ〜残念。
でも、うれしいことに『ドイツ おもちゃの国の物語』(東京書籍 川西芙沙著)の最終ページに、この店の外観イラストが載っています。とっても素敵な絵です。私の手元には構図の非常に悪い写真が、たった一枚。そしてその店で購入した品物は手元に2点しか残ってないけれど、その日の思い出は、しっかりと心の中に残っています。
その「初エルツもの購入旅行」後、自室の棚に「羊飼いのミニクリスマスピラミッド」を発見。裏を見ると「MADE IN GERMAN DEMOCRATIC REPUBLIC」とハンコが捺印されていました。これは旧東ドイツ時代につくられた証拠。勤務先の店で94年以前に、エルツの工芸品を無意識のうちに購入していたのですね。
このミニクリスマスピラミッドは、今日も、自室の風通りがいい場所で、クルクルッと軽快に回っています。工房名は不明ですが、今も作り続けられていることは確かです。さすがだな...エルツさん。