おもちゃ屋にとって11月はもうクリスマスシーズン。全国レベルで1年で1度だけ、エルツ地方の工芸品にスポットがあたるこの時期。エルツ好きな私にとってはうれしい季節です。
クリスマスの主役は、なんといっても「サンタクロース」。
赤い服に白いひげ、たまに、もみの木なんかも持っていて、白い大きな袋を背にかついでいる。
そういや杖や木の枝を持ったサンタもいる。
よく見ると、ちょっとずつその出で立ちに違いがあります。
「サンタ・クロース」は英語読みですが、
工芸品の入った箱に書かれた商品名は、ドイツ語表記。
よく見てみると・・・
- 「St.Nikolaus(ザンクト・ニコラウス)」
- 「Ruprecht(ルプレヒト)」
- 「Weihnachtsman(ヴァイナハツマン)」
ん? 商品によって呼び名が違う? この3人は誰?
しかし、輸入玩具メーカーはこれらをまとめて「サンタ・クロース」としている。
だって、ぱっと見た外見は同じ。どういうことでしょう?
では、この3人を紹介します。
- 「ザンクト(聖)・ニコラウス」
- 実在する聖人で貧しい3人娘に金貨を投げて身売りするのを救ったといわれており、子供の守護聖人。命日の12月6日は、カトリックの地域では「聖ニコラウスの祝日」という、子供たちにとってはドキドキする日。
良い子は、施し物の入った袋からナッツ、果物、レープクーヘン(蜂蜜とショウガの入ったクッキー)などがもらえ、悪い子にはお仕置き用の棒が渡される。
三角形の司教帽、司教杖、長い衣を身につけている。服は白か黒、または赤。(右写真はツィニー社製の「クッキーとサンタ(原名:聖ニコラウス)」)
- 「ルプレヒト」
- 聖ニコラウスの従者。青または黒っぽい服を身につけて、小枝のむちを持っている。(最初の写真はギュンター・ライヒェル製の「サンタとつえ(原名:ルプレヒト)」)
- 「ヴァイナハツマン」
- 12月25日にやってくるサンタ・クロースのドイツ語での呼び方。16世紀にプロテスタントが、司教の訪問を廃した。プレゼントは聖人からではなく、主イエス・キリストからもらうべきとし、その日を12月25日に決めた。そして、オランダ人の発音した「セイント・ニコラウス」がなまっていたため、他の国の人々には「サンタ・クロース」と聞こえた。
つまり、カトリックでいうところの「聖ニコラウス」が、プロテスタントでは「サンタ・クロース」になるわけです。(右写真はバベット・シュヴァイツァ社製の「ツリーを背負ったサンタ(原名:ヴァイナハツマン)」)
なんだか、話がごちゃごちゃになりそうです。
「聖ニコラウス」と「ルプレヒト」はエルツのカタログを見るかぎり、違いはよくわからず、制作者が勝手に使いわけているようにしか思えません。
「ヴァイナハツマン」はもみの木を持っているかとおもいきや、そうとは限らない。
つまり...この三者はみんな「サンタ・クロース」と呼んでいいのでしょうね。
(治井紀子)
この連載は今回で最終回です。1年間ご愛読ありがとうございました。