アングーラについて語ろう

●参加者:柿田友広、相沢康夫、佐々木隆行
●記録者:川島眞弓
●日時 :1999年7月17日(土)
●場所 :百町森おもちゃ村


ホームWe love Naef!!トップアングーラパターン表|対談


■まずは平面遊びから■

柿田:
年齢順に紹介しようかなと思ったけれど、それも苦しいので、ネフスピールと相性がいいと言うところからきて、アングーラがいいかなと思うんですよ。ネフスピールと合いますよね。クリスマスツリーのパターンとかね。「ネフスピールを持っているんですが、次に何がいいでしょうか?」って言う人には、私はアングーラをすすめちゃう。
相沢:ネフスピールをジョイントにして使えるんだよね。ジョイントが16個もあるので、すごく便利だよね。
佐々木:うちの子(3才半)は、まだ平面で遊んでいて、よくサカナを作っている。こうして、サカナを作って(上図)、最後のキューブをここに付けてウンチっていうんだよね。あと教えた訳じゃないけど迷路を作ってるね。
相沢:うちの子もよく迷路を作ったよね。うちには2セットあるからさ、かなり複雑な迷路ができる。
佐々木:平面でも結構遊べるよね。
相沢:子ども向けのパフォーマンスの時、(パーツを1本とって)3時、9時、「く」、「へ」、ってやるんだよね。それでちょっと笑いを取ったりして。(笑)
柿田:ジョイントを使う前の段階で、うちの子はよく「犬ができた。」って言った。何となく重ねていくと、耳の垂れ下がった犬の顔みたいに見える(下図)。あと、キュービックスと組み合わせて、クモとか蟻地獄とか言って面白がっていたよね。アングーラは昆虫のようなものの足になる。
相沢:秩序を持たせても、秩序なく適当に並べても、何かに見えてくるっていうのがすごい。それができるのは、シンプルだからだよね。


■アングーラの特徴■

相沢:
アングーラの一番の特徴はシンプルであるということ。クラーセンはよくこれで製品にしようと決めたなと思う。この直感はすごいなと思うけど、この形だけで、製品化できるってよく決心したなって。クラーセンは高度に数学的なものを作ってるのに、あまりひねらず、このデザインでよしとした所がすごい。
柿田:確かに大人がキュービックスやセラを知った後で、これを見たときひねりがないなって思うかも知れないよね。
相沢:第二の特徴は色。アングーラカラーの9色だけど、一番小さいキューブのパーツを抜いて、こうして順に並べると、黄色と黄緑の線で2つに分かれるっていう印象がある(上図)。暖色と寒色で分かれて、こう重ねるとそれぞれがほぼ補色関係にあるんだよね(下図)。赤と緑、オレンジと青、黄色と藍色、本来は藍色でなくて紫だけどね。
佐々木:へぇー、なるほどね。
相沢:こういう色付けにしても、「教具」ではないから、何かを教えようとしているわけではないと思うけど、この分かれ目の中に暗にそういう意図もあると思う。結果的に数学的な配色が美しさを生んでいるよね。それと、何と言ってもすごいところは、このジョイント(スタンド)だよね。キューブは別にして、ジョイントが4つで、4(暖色),4(寒色),4(ジョイント)の組み合わせになる。本来の基本となる基尺が10cmで、それを4分割して2.5cm、数学的だよね。

相沢:ジョイントがおもしろいのは、グリコのおまけじゃないけど、ちょっと付いていてうれしいっていうレベルじゃなくて、これが付いているかどうかで2倍おもしろくなるところだよね。
佐々木:パフォーマンスでも、ジョイントを使うと、ぐっとすごいパターンができるよね。
柿田:すごくダイナミックだよね。ジョイントを使った時に、とても高く積めるようになる。子どもだと、自分の背より高くなったりしてね。


相沢:ここ(上図)に、ジョイントを置いたのは私が最初だと思うんだ。
佐々木:えーっ!(驚)そうなの?
相沢:だって、ネフのパターン表にもないもん。
柿田:そうだよね。あのユルグ・ネフとのアングーラ対決の時も相沢氏がここに置いた時、それまでと全然違う積み方になって、みんな驚いてたよね。
相沢:ジョイントを使った置き方で、ネフ社やクラーセンが気付いていない積み方っていろいろあるよね。たとえば、こんな風にずらして置く。
佐々木:これはまた結構大胆だね。
相沢:それとか、これなんかは、変でしょ(下図)。
柿田:うーん、すごいね。オブジェみたい。
相沢:2.5cmの正方形の角柱で全てが構成されているから、ジョイントのへこみは90度。普通は、こうv字型に置く。でも、側面のここの角度も90度ってことに気付けば、こういう積み方もあるってことに気付く。こっちも90度でしょ。それに気付けばこういう乗せ方があるってことがわかる。それで、色々やってみたくなる。

さいとうくんの考えたパターンで、こうして波を作るでしょ、で、それを、この「く」の字の上にこう乗せる。さらにこう乗せる。このままだと、倒れるからここをほんの少しずらすんだよ。そうするとぴたっと止まる瞬間がある。ほらね(上図)。
佐々木:うーん。すごいね。だから、ここに隙間が少しあるんだ。
相沢:でも、私はこれ好きじゃないんだけどね。なんかおしゃれじゃないよねぇ。ぴたっとしないっていうか。えーっと、何とかならないかな。このパーツの向きをこうした方がおしゃれだと思わない? この方がきれいだよねぇー(下図)。
佐々木:あ、これ、すごいよね。
相沢:この「と」の字の組み方も、さいとうくんが作ったんだけど、これはすごいよね。私は好きですね。大きい方から2番目のパーツから使ってるんだけどね。1番大きいパーツからやると絶対崩れる。私も何度もやってみたけど、かなり難しくて途中で止めた。

■アングーラの本質はバランス■

柿田:アングーラの本質は、バランスなんじゃないかと思うんだけど、クラーセンやネフ社が、あらかじめ考えたパターンを、アングーラほど壊したものはないよね。相沢氏がバランス積みのアイデアをベースにものすごく色んなパターンを考えているよね。
相沢:ネフスピールとアングーラだよね。アングーラに関しては、たぶん世界で一番私が売っていると思う。好きだからね。ネフスピールには、パターン表が付いてないし、アングーラのパターン表にも大したパターンは載ってないよね。
佐々木:バランス積みについていえば、クラーセンやネフ社はあんまり考えていなかったのかな?
相沢:ま、考えてないってことはないけどさ。
佐々木:でも、このレベルだよね。
相沢:少なくとも「く」の字で立てるっていうのは、私の発想だと思う。90度っていうところに目をつけて、こういう置き方もできるかもしれないって思って、やってみたらできた。それができるっていうのも、精度の問題だよね。ダイナミックな形を組むにしても、精度がないとできないからね。
佐々木:よく作ってるよね。強度的には、一番壊れやすい形だよね。これを製品化したところが面白いよね。これ材料は何?
相沢:かえでです。
柿田:製法上は中に何か入っているの?
相沢:打棒が対角線上に2本入っているんだよね。キュービックスなんかは1本だけどね。2本入れて、ずれないようにしてある。
佐々木:ネフの材料選びとか、比重で選別してるかどうかとかすごく興味があるよね。品質をキープするには、絶対不可欠だと思うよね。一つの箱の中で(同じセットの中で)だけ、きちんと精度があってればいいって訳じゃない。後でパーツを補充しても、同じように遊べる様にするには、その品質を常に保って置かなくてはならない。きっとそこまで、考えていると思う。

■ネフ社の積み木は誤解されている■

佐々木:
ちょっと話が変わるけど、この間、インターネットでネフスピールとかは、16個しかないけど、それで足りるのかっていう質問がきたんだ。フレーベル積木とかは、たくさんパーツがあるでしょ。
相沢:2セットあると、遊びは広がるよね。私も、よく、ネフの積木とデュシマの積木(フレーベル積木)のどっちを先に与えた方がいいかという質問を受ける。私は、文学的に言うと、ネフの積木は絵本で、デュシマは児童文学に近いと思う。デュシマは床上(しょうじょう)の積木で、ネフは机上(きじょう)の積木。ネフの積木は机上で独立した空間がもてて、そこに1つの完成されたファンタジーの世界ができる。絵本に近いよね。絵本の体験を色々積んだ上で、デュシマ型の積木を使うと、沢山のパーツを使って、天井まで届くような大きな遊びができる。より、大きくて刺激的な遊び方っていうか。だから、結論を言えば、先にネフの積木で遊んだ方がいいと思う。
柿田:ネフの方が、小さい子でもとっつきやすいよね。
相沢:ネフの積木は、大人のアート、オブジェではない、って言いたい。ネフの伝道師の私としては(笑)、何を伝えればいいかって考えると・・・。ネフ社の積木には、2つの誤解があると思う。1つはめちゃくちゃ高い積木だってこと、ともう1つは子ども向きじゃなく大人のものだ、っていうこと。
 まず、高いかどうかという点では、亀井さんの作品を見ても解るけど、この精度と美しさ、グレードを保とうとすれば、どうしてもこれ位の値段になってしまう。アングーラはもうじき発売から30年になるけど、今でもパーツをなくしたら取り寄せることができる。そういう点からみても、高いかどうかって言えば、私は決して高くないと思う。
 もう一つの誤解は、大人のものってこと。自信をもって言えるけど、これは子どものものですよ。あれだけ子どもがよく遊ぶのを見るとホントによくわかる。子どもに遊ばせて、初めてわかる。
佐々木:相沢氏も最初見たときは、大人のものだって思ったでしょ。何がきっかけでそういう風に考えるようになった?
相沢:そうだね。私がまず、おもしろがって遊んでると、子どもも何々って感じで遊び出す。ホントに子どもがよく遊んだ。それを見て、あ、これって子どものものだと思った。
柿田:「遊ぶ」はドイツ語でシュピールって言うんですよ。で、サッカーをするとか、ピアノを弾くとかも同じ単語を使うんだね。「遊ぶ」ということに日本語ほど、子どものもの大人のものって区別がない。大人だっていろんなことで本当は遊んでるんだよね。それとか、保育と子育ても同じ単語なんだよね。すごくシンプルだよね。
日本は文化として、子どもの視点を基準にして言葉を使う傾向がある、例えば、家族の呼び方とかね。それが高じると、過保護になったりもする。媚びているというか、子どもを劣ったものとしてみているというか。逆に言うと日本の文化は緊張しなくていいって所もある。どっちがいいかっていうのは、一概には言えないけどね。


■シンプルだからこそ奥が深い■

相沢:
こうして積んでいくと・・・、少しずつずらせばうまく乗るかな。後2本だね。この後が、がぜん難しい。
柿田:いいね、じゃりおじさんみたいだねー。
相沢:ちょっと違う気がするけどな・・・。最後の1本か。何とかなるかな。(崩れた!)
佐々木:やっぱり、こういう所がダイナミックだよね。
相沢:そう、何度も言うようだけど、シンプルだからできるんだよね。あんまり複雑だとできない。
佐々木:どーんと高くなるところがすごいよね。他のは、ここまで高くならない。
柿田:そうそう、南京玉簾みたいだよね。色々やって、あっ、できた、できたって感じ。
相沢:90度に目を付けて、こう置くこともできるかも、こうすることもできるかも、って考えていくところが本当におもしろいよね。アングーラをアートだって位置づけちゃうと、ダイヤモンドよりずっと評価が低いと思う。私が一番手に取ることが多いのは、アングーラ。シンプルだから奥が深い。遊んでみるとそのよさ、深さがわかる。ネフ社の誰より、クラーセンより私は遊んでいると思う。手にとって、遊んでみてその面白さがわかるって所では、アングーラが一番だと思うよね。
柿田:頭で考えるより、手で探り当てる。
相沢:そう、手で発見する。私の弟子の琢磨くんの友達が考えたっていう、アングーラパラパラ落ちも(上図〜中図〜下図)おもしろいよね。これなんかは、小学校3年生の子が考えたわけで、私も知らなかった。私の知らないパターンだってまだまだある。自分で遊んで、自分で発見していく。まだまだいくらでも可能性があるって所がおもしろい。
佐々木:相沢氏の発想をベースにして、色々発展させていける。
柿田:これからも、まだまだ発見があるだろうね。
相沢:私は幸いすごくいい位置にいて、琢磨やさいとうくんや、黒坂牧師とか、いろんな人が、「ね、こんなのができましたよ。」って言って、見せてくれる。黒坂さんは、キュービックスでウルトラマンを作ったっていうんだよ。ネフのロゴがあるところがカラータイマーだって。思わず「ばかだなー。」って言っちゃった。怪獣を倒して帰っていくところだそうだ。(笑)
佐々木:この辺の詳しい話は、またキュービックスの回にしましょうか。
Last Updated: 1999/08/02

ホーム | おもちゃ | 本・絵本 | 家具・遊具 | ご注文 | ニュース | 百町森について | 子育て便利帖 | お問い合わせ | WeLoveNaef!

Copyright 1996-2003 Hyakuchomori Co.Ltd. All rights reserved.
ご注文お問い合わせは百町森へTEL :054-251-8700/FAX :054-254-9173
E-mail: shop@hyakuchomori.co.jp