買い物かごを見る
ホーム おもちゃ 絵本・本 家具・遊具 ご注文方法 We love Naef!
ニュース 百町森について 子育て便利帖 お問い合わせ
百町森について記事
「インダストリー・ジャパン」2004年4月号

モノづくりの原点

〜自然と幾何学と芸術の統合〜

根本純子

「インダストリー・ジャパン」2004年4月号

多種多様な「ものづくり産業」から生まれたモノの辿り着く先を考えたとき、その対象年齢がもっとも幼少であるのは”おもちゃ”である。おもちゃの文化レベルでその国のレベルも分かると言われるように、特にヨーロッパでは明日を担う子どもたちに与えるおもちゃは非常に重視されている。

先日興味深い講演を拝聴する機会に恵まれた。”心を育てるおもちゃって”と題し、3時間に渡り熱弁を奮ったのは相沢康夫氏。同氏の本業は静岡市のおもちゃ店の店員。同時に漫画家であり、さらには積み木デザイナーとしても異才を発揮している。自身がデザインした作品も含めた数々の積み木を操り、様々な形を組み上げる”積み木パフォーマンス”を交えた講演は聴衆を釘付けにした。

同氏が積み木デザイナーとなるきっかけとなったのは、スイスのおもちゃメーカー・ネフ社の積み木「キュービックス」との出会い。もともと家具職人であったクルト・ネフ氏がオブジェとして積み木を作ったことがその始まり。そこで作られる積み木の美しさと品質の高さは比類がなく、第一号の作品「ネフスピール」は1958年の発売以来45年経った今もなお製造・販売され長い年月に渡り世界中から愛され続けている。またデザインを世界中から募っていることも特長の一つで、相沢氏もその一人なのである。

では、相沢氏の作品を含めネフ社の積み木の素晴らしさはどこにあるのか?それは何より子どものために考案された積み木が、どれをとっても子どもに媚びたり、子どもを馬鹿にしたりしていない点にある。例えば人気キャラクターをつけることなどにより本来の品質以外の部分で売ろうという姿勢がまったくない。ネフ社の製品が長きに渡り愛され続けている所以がそこにある。まさに定番と呼べるモノばかりで、使い捨てされるおもちゃとは異なり、耐久性にも優れ、確実に次世代へ継承していくことができる。創立時の積木を含めパーツの取り寄せも可能だ。

2.5cm。これはネフ社の積木の基尺(積木の基本の尺度)。同社の積木は幾何学的に算出された2.5の倍数で作られている。これにより異種の積木を組み合わせることが可能となり、遊びが無限に広がっていくというわけだ。

そして三原色を基に展開した芸術的色づかい。同系色のグラデーションや補色関係など細部に至るまで計算しつくされ、モノの辿り着く先である子どもと真剣に向かい合う真摯な姿勢の賜物であるといっても過言でない。

ネフ社で製品化された相沢氏の作品は全部で4種。中でも2003年グッドデザイン賞(日本最大のデザインイベント)に輝いた「ヴィボVivo」はV字型。従来の積木が四角形を基に作られているという概念を覆し、三角形を基に考案されている。つまり90度の世界から離れ、60度の世界で”積木の伝統にない形”を作り出すことができる。更にV字の下部を切り取ることにより積木の上下がいずれも一辺2.5cm(前述のネフ社基尺)の正方形になっている。これにより四角形を基にした積木と組み合わせ、コンビネーションを楽しむことが可能なのだ。相沢氏は一級のおもちゃデザイナーであるとともに、超一級のセンスを持った”遊び”の天才なのである。

”自然と幾何学と芸術が統合”された積木は実際に手に取ったときの肌触りから、積み上げたとき、それが崩れたときの音や形に至るまで、あらゆる面でクオリティの高さと無限性を体感する。大人をも魅了する積木が、正真正銘純粋で柔軟な感性と本物を見極める目を持った子どものために作られたものであることに、改めて作り手への畏敬の念を抱かずにはいられない。

モノが辿り着く先の対象に媚びず、馬鹿にせず、本物を作ることに精魂を込める作り手の姿勢の中に”モノづくりの原点”を垣間見た。

Copyright 1996-2006 Hyakuchomori Co.Ltd. All rights reserved.
ご注文お問い合わせは百町森へTEL :054-251-8700/FAX :054-254-9173
E-mail: shop@hyakuchomori.co.jp