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百町森について記事
2001年8月23日(木) 毎日新聞(静岡版) 朝刊

21世紀−静岡の100人
最高のモノ 発信したい

木のおもちゃを提案する 相沢康夫さん

 「子どもがおもしろがってくれるのがうれしい」。相沢康夫さんは静岡市鷹匠の絵本とおもちゃの専門店「百町森」で営業を担当する傍ら、独自の積み木やモザイクなどの木のおもちゃを発案する。
 木製のおもちゃで有名なスイスのメーカー「ネフ」にも認められた。同社などから既に7作品が国内外で発売されている。製品は、V字型や六角形といった数学的な規則を持つカラフルな木のセット。積み方や組み合わせ次第でさまざまな模様や形ができる。大人も思わず引き込まれる。
 静岡市で生まれ育った。手塚治虫の影響を受け、小学校時代から漫画家志望。市内の高校を卒業後に上京した。皿洗いなどをしながら作品を仕上げては出版社に売り込んだ。「楽しい時期でした」という3年間の後、「東京でなくても漫画は描ける」と実家に戻った。
 漫画を描きながら、印刷会社で製版、染物会社の図案、別の印刷会社で営業マンも経験した。
 そんな時、子供に読んでもらいたい本をそろえて79年にオープンした百町森を知った。絵本にも興味があったので、店の姿勢に共感し、84年に就職した。
 本格的な木のおもちゃとのかかわりは、店がおもちゃを扱い始めた89年ごろ。ネフの積み木「キュービクス」のとりこになった。さまざまな積み方を可能にする部品の精度や美しい色合い。「何より子供と真剣に向き合うモノ作りの姿勢に衝撃を受けました」
 一念発起し、おもちゃを夢中で勉強した。もちろん幼児教育も。「幼い子供に電動は好ましくないのでは・・・」などの疑問を持った。改めておもちゃに目を向けると、テレビでブームのキャラクター商品をはじめ、子供の想像力や意欲を育むとは思えない「自分のきらいなおもちゃ」が多かった。

 数学的に面白いと思った発想を図面にして、いくつも試作品を作った。作っては、最良のモニターとして自分の子供2人(後に3人)に遊んでもらう。「子供の手が喜んでいるかどうかで出来栄えを判断できます」。ボツになった試作品も多い。デビュー作は92年にあこがれのネフから発売された「アイソモ」というモザイク遊び。そんな相沢さんを百町森経営の柿田友広さん(48)は「天才肌というより努力家、一つのことに熱中するパワーはすごい」と評する。
 小学生になる前には、ファミコンなどで遊ばせない主義だ。遊びながら動く仕組みが理解できないモノは幼児期にふさわしくないというのが持論。最近は全国の大学や保育園などから講演に招かれる回数も増え、木のおもちゃの良さを発信し続ける。
 「どうせ子供の使うものだから」という考え方が嫌い。「未熟な子供が使うおもちゃだからこそ、最高のモノを提供したい」。固い信念だ。
 百町森に相沢さんのおもちゃは並んでいる。

(遠藤和行)

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