ネフスピールについて語ろう

●参加者:柿田友広、相沢康夫、佐々木隆行
●記録者:川島眞弓
●日時 :1999年5月22日(土)
●場所 :百町森おもちゃ村
●はじめに:この日の夕方「ホームページでネフの紹介をしたいので、ちょっと相談に乗って下さい。」と呼びかけて始まったこの日のミーティングは、とんとん拍子に話が進み、第1回目の特集は相沢氏の意向で「ネフ・スピール」に決まり、対談まで始まってしまった。


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■ネフ・スピールを積み上げるのって、子供には難しい?■

柿田:私の子どもの体験から言うと、リグノと一緒によく遊んだんですけど。ひたすら上に積み上げていくのが印象的だったなぁ。危なっかしい形(左図の右)でずっと積んでいく。
佐々木:うちの子は2歳から、かませていく形(下図)で積んでいって、全部16個積んだ。16個積むとかなり迫力があって、すごい達成感があったみたい。
相沢:2歳で16個積めたら、もう拍手だよね。
佐々木:リグノは、なかなか16個積めないけれど、ネフスピールならできるんだ、と気付いたときは「すごい」と思いましたね。
相沢:本当はまっすぐ上に積みたい。でも、うまくできず、偶然45度ひねってしまう。それでぴたっとはまる。
佐々木:そうそう。意図的に45度ずらして積んでいる訳ではなくて、なんか偶然そうなったって感じ。
柿田:うちの子はそれが、気に入らなかった。どうしても、まっすぐのせたい。だから、すごくいらいらした。何度もやって、やっと積めた時がある。絨毯の上だとぐらくらしてしまうので、テーブルの上でやる。やっとの思いで、自分の背の高さまで積めて、すごく喜びましたよね。
佐々木:ただ、一度45度ずらして積んだので、逆にまっすぐに積めなくなった。3歳を過ぎた今でも、ずらして積みたがる。ある種の混乱が生じている感じ。
相沢:2歳で上に積むのはかなり難しいよね。
柿田:うちの子は、2歳で上に積んだと思う。できないから、横で必死に大人も手伝った。いらいらすると大変だからね。で、手伝うとまた怒ったりしてね。だから、わからないように、ちょっと下の方の角度を直してやったりして。
相沢:大人はそんな大変じゃないけど、上に積んでいくのは子どもには難しいよね。

■ネフ・スピールのデザイン■

佐々木:ネフスピールは、この残っている所がすごいよね。
相沢:そう、立方体の四隅が残っているんだよね。この四角の倍の長さが、この部分になっているんだよね。ここがポイント。この四隅がないと、形にならない。この四隅の遊びがあることで、リボン型が成立する。でも、製作年によって、この四角の大きさが違っている。比べてみるとすぐわかるけど。クラーセンの作ったものは、高度に数学的なんだけど、ネフさんは、数学的な考えを入れていないと思う。私も、デザインを始めてからわかったんだけど、このアバウトさがネフさんのスゴイところだと思う。私ならここを何ミリにすると、一番うまく積めるかとか、もっと詰めて考えていくと思う。ネフさんは、そこまで考えていない。でも、そこがいいんだよね。
佐々木:ネフさんらしい所だよね。

■積み方の基本パターン■

柿田:相沢氏がネフスピールを紹介するときに、いつも2つのピースが何通りの置き方があるか初めに言うよね。
相沢:2歳の子は最初、こう(横に)は置かない。どうして、そうしないかって所から考え始めた。何でかって考えた時、子供はネフ・スピールの突起から、四つ足を連想するんじゃないかと思った。まず1つを四つ足で置いた状態で、次の1ピースをどう置くかって所から始めたんだよ。
佐々木:パフォーマンスでは、8通りやってたよね。
柿田:あれは、最初にやるとすごくいいですよ。
相沢:実際すごくネフスピールで遊んでいる子どもたちに、クイズでやらせると、結構おもしろい。2ピースを使ってどんな積み方ができるでしょう? 年長ぐらいだとやれるよね。
柿田:ほとんどの場合この基本の積み方の連続だよね。以前、アングーラのジョイントもネフスピールが原点じゃないかって言ってたんだっけ?
相沢:ネフ・スピールのはじめのアイデアは、アングーラのジョイントと同じ形だったんだ。ところが、工場に頼んでできてきたのが、今のネフスピールの形。偶然の産物なんだけど、ネフさんはその方が面白いからって製品化しちゃったらしい。クラーセンはホントに天才だけど、彼と比べてネフさんのすごい所は、遊び心だと思う。クラーセンは自分のおもしろい数学を追求している。ごく私的な遊びを展開してるっていうか。でも、ネフさんは、常に小さい子を頭に置いている。どうしたら、子どもが喜んで遊ぶか。子どもが遊ぶ様子を見てからでないと、ネフスピールの本当のすごさは伝わらない。
柿田:クラーセンの中でもアングーラも最初取っつきにくいと思う。ネフスピールとアングーラのおもしろさをみんなに伝えているのは、相沢氏の功績だよね。
相沢:ネフ社は10何年も前から、ネフ・スピールを廃盤にしようかとも言っているんだよね。

■「壊れ方」を考えて積む■

柿田:相沢氏のパフォーマンスの中で落ち方、を随分やるよね。あの壊すって考え方は、ネフスピールから始まってるよね。
相沢:そうだよね、ぱらぱら落ちから始まって、落ち方がおもしろい。どうやって、動くかって言うところがおもしろい。
柿田:小さい子には、まず積んでほしいけど、この落ち方に気付くと積み木は飛躍的おもしろくなる。
佐々木:他に壊すっていう遊びってあるのかな? ドミノなんかは壊すことを前提にしてるおもちゃだけどさ。壊すことを前提にしながら、ものを作っていくっていうのは、すごく大事な気がする。ぼくは、今建築の仕事をしているので、まず住宅は壊れるというところから、デザインする。地震が来たとき、どうやって壊れていくのがいいのかとかね。
相沢:うーん。それおもしろい考え方だよね。ネフスピールでぱらぱら落ちを体験している子は、そういう発想ができるようになるかもしれない。
柿田:外遊具もいま、環境のことまで考えて作ってる。いらなくなった時、ゴミにしないようにするにはどうしたらいいか。積み木には、プラスチックのブロックにはないおもしろさがある。ブロックには作る過程と作ったもので遊ぶっていうのはあるかもしれないけど。壊すってところは、考えていない。繰り返し作って遊び、それを壊して遊ぶ。積木にはこの面白さがある。
相沢:さいとうくんがやるおもしろい積み方なんだけど・・・。この状態で安定しているけど、一つ一つ積み木を取っていって、いくつ取るとこれが崩れるか。遊びの中で、壊れる瞬間を手で知る。頭でなくて、体で覚える。おもしろいよね。たとえばこの積み方は、数学的に言うと、重心がずれているので、絶対壊れるはず。でも、摩擦係数があるからこれで安定している。これ見つけたときうれしかったよね。こういうのを発見するのが、大人の楽しみだよね。積む行為っていうのは足してくんだよね。さいとうくんが言ってたけど、それを壊す、つまり引くって発想がおもしろい。

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