10年前に、このおもちゃと出合うことがなければ、私はおもちゃの世界にドドーッとのめり込むこともなく、自らおもちゃのデザインをすることもなく、本書を執筆することもなかっただろうなと、つくづく思います。私の運命を変えた一つのおもちゃ、それがこの『キュービックス』です。
一辺10cmの立方体を、10個のパーツに分割した積木です。これを10本の指で遊ぶことを指して、作者ピエール・クラーセンは「自然と幾何学と芸術の統合」と語っています。未来建築や宇宙を連想させるオブジェのような作品ができ上がります。
フレーベルは、積木を”宇宙の法則までも直観しうるもの”と考えた、と書きましたね。彼の積木の考案から約一世紀、その原理の一部は、少年時代にフレーベル積木で遊んだという天才クラーセンによって見事に花開いた、と私には思えてなりません。