ま、見ての通りのおもちゃです。でも「フーン、なるほどね」なァんて簡単に納得しないでください。このおもちゃの真価は、これで遊ぶ子どもの目の輝きと、遊びへの集中度、そして継続時間を目の当たりにしないと、なかなかわかってもらえないんだから、ホント。
今年89歳になるベック氏の作品の大半は、物を落とすおもちゃです。この、物が落ちるというなんのへんてつもない自然現象を、子どもが喜ぶってことの発見がすごい。私は同じデザイナーの一人として脱帽するしかありません。
シロフォンの奏でる音色の美しさに、それをもう一度聞きたいと思った時、子どもは自ら手を伸ばし、玉をつまみ、穴に入れる、ここに主体性があるわけです。
平凡な作り手がこの類のおもちゃを作ると、下に落ちた物を電池で上へ持ち上げちゃったりするんですよね。動力はえてして主体性を奪うことが多いのです。発売から45年、全世界ですでに20万台以上も売れているロングセラーです。