さて、廃番製品を取り上げます。おもちゃを考える時、大量生産、大量消費の流れの陰で消えていくおもちゃたちに目を向けることも、意味のあることだと思うからです。
「美しさ」という要素は、おもちゃの世界では、とかく後まわしなんですね。「遊びの機能」がまずあり、「素材」や「価格」が見合う製品であれば、たいていおもちゃは売れるわけです。デザインについては、「美しいに越したことはないけどね」程度の認識だと思うのです。
子どもが触れて遊ぶおもちゃは、まず美しくありたい、できればアートであってほしい……なんて考える私は異端なのかもしれません。
ビタリー氏のデザインしたおもちゃたちを目の前にする時、そのあまりの美しさに私はしばし我を忘れます。なめらかなフォルム、完璧な仕上げ。「子どもにもったいない」なんて声が聞こえてきそうですが、こうしたものこそ、感受性のまだ衰えていない子どもに遊んでほしい、と私は思います。
ただ、ほとんどが手作業による仕上げのため、結果的にとても高価になってしまい、売れない、そして廃番……。残念です。乞う復刻!