01 ジーパンとTシャツで本を売る姿にあこがれて
25年前、1979年3月1日に、今「子ども村」(今は「あそび村」)と呼んでいるところ(親父のやっていた印刷屋が移転した後の場所です)に子どもの本の専門店としてオープンした百町森。最初は3坪のスペースでした。問屋の存在すら知らずに始めたので、現金持って、東京の出版社に直接本を買いに行ってました。当然、交通費も出なかったはず。でも、大好きな本が棚に置いてあるだけで楽しかったし、それが、売れようものなら…。
当時、絵本は『はせがわくんきらいや』(長谷川集平/作・絵)、児童文学では『兎の目』(灰谷健次郎/作)が大好きで、こういう本が一冊でも売れると、その日一日うれしくてうれしくて、という感じでした。この年の夏、新聞社の方が取材に来てくれて、お客さんもぐっと増えましたが、それでも、一日5千円売れれば「やったー!」という状態で、これが1〜2年続きました。少しでも読者を増やしたかったので、自分の本を貸したりもしていました。純粋と言うか、呑気というか…。「この前の本、よかった。」って、言われることに、生き甲斐を感じていたんですネ。これが私の「物売り」としての原点っていうやつでしょう。
私がこういう店を始めたのは、絵本や児童文学というものを、子どもの頃は知らずに育ったからなんです。大学生の時、これらの面白さにハマってしまって、子どもの時出会えなかった事が悔しかったわけです。大学で清水真砂子の児童文学の講義を受けた友達がいて、その友達からいろんな絵本なんかを紹介してもらって、それがきっかけで子どもの本にのめり込んでしまったんです。また、当時『月刊絵本』という雑誌が出ていて、私はこれを読むのが毎月ほんとに楽しみだったんですが、その中にイーヨーズというニューヨークの子どもの本専門店の記事が出ていて、ジーパンとTシャツ姿のお兄さんが楽しそうに絵本売ってる写真があって、「これだ!」って思っちゃったんですネ。
(コプタ通信2004年05月号より、文:柿田友広、絵:相沢康夫)