07 百人に一人の仲間を求めて
子どもの本を普及させたい!という思いと、だから子どもの本の店を開くということは、普通の人は直接結び付かないことなのに、どうして自分は一つのように考えていたのでしょう。おそらく、売るという行為にも、それはそれで大変魅力を感じていたのだと今になって思います。でも、売りたくないものまで売るということは許せない自分。自分が好きなら人も好きに違いない。その一心で私は当初、突っ走っていたのです。そして、好きな本が売れるとウキウキし、売れないと落ち込み、売れても感動してもらえないと、また落ち込んで・・・。
ある時、こんなことがありました。大好きな『フレデリック』(レオ=レオニ作、谷川俊太郎訳)という絵本の内容を説明したりして薦めていたら、その人も気に入ってくれましたが、お金を持っていない。ご近所の人だったので「明日集金に行くからまあ持ってってヨ。」ってことになったんだけど、次の日、行ってみたら、「ここが気に入らないから、やはり返したい。」って。
また、百町森の名前の由来にもなっている 『クマのプーさん』(A.A.ミルン著、石井桃子訳)も、開店当初は、来る人来るひと捉まえては薦めていましたが、「読んだけどどこが面白いの?」という人が意外に多い。
私の心意気を感じて、小学校の図書館の本を百万円近く、百町森から買ってくれる学校もありましたが、私がいいと思う本はそのうち1%もない。ほとんどは図書館用に作られた薄味な本ばかり。これはこれで割り切ればいいのに、どこか、納得がいかない自分。
こういうのをどう考えたらいいのでしょう。百人に一人も、自分と意見や感じ方が一緒の人がいないという事実。 私のやってることって本当に押し付けなのですネ。イベントや移動販売もうまくいかず、自分の好みを押し通すスタイルも行き詰まり、店を始めて6〜7年目くらいの頃、私は大きなスランプに陥っていました。
今は、いろんな人がいるから面白いって思えるし、逆に、百人にひとりの出会いを有難く思えるわけですけどネ。
(コプタ通信2004年11月号より)