10 本屋はボランティアなのか
情熱だけではじめた百町森は当然利益のでない日々の連続でありました。最初は儲けなくてもいいと思っていても、それでは当然長続きしないものです。お店を始めてから7年目位には、未払いの請求書が一千万円くらいになっていました。これは、5年目に売り場面積を増やし、在庫も増やしたのに、売り上げが付いていかなかっためです。取次ぎ(本の問屋のこと)の役員が、青い顔して東京からやってきました。「少ない在庫を、多く見えるように並べるのが店作りのコツだ。」と私は説教されました。それを機に、本を返品し在庫もかなり整理するようになりました。(本は、全部ではありませんが、利幅が少ない分、返品が出来ます。これは他の商品にないシステムですね。)でも、私はこの返品という作業が嫌いなのです。返品したら請求金額は減っていきますが、それで儲かった訳ではないので、何か無駄な労力を費やしているような気がするのです。それに取り寄せた本は、一冊々々、皆愛着があり、残ったら、自分のものにすればいいかなんて、どこかで思ってしまうのです。(出版社の皆さ〜ん、返品しないから利幅を増やしてくれぇ〜、お願いしま〜す!)
それにしても、利益がでないことは、苦しいことです。断腸の思いで返本した直後に、「あらその本ほしかったのに。」なんてお客さんによく言われました。なくなると欲しくなるってのが「消費者心理」ってものでしょうか。当時、私は大変悩んでいたのです。「衣食足りて礼節を知る」というのは本当ですね。そういうお客さんとのやり取りにも大変疲れていました。この頃の私にあった人は印象が悪かったかもしれません。一千万円くらいの借金で自殺する人も世の中にはいます。店は誰かに任せて、自分は資金稼ぎに他の仕事をしようとか、その頃そんなことを考えるのが習慣になっていました。
今も、年間1,000軒の本屋がつぶれていると言われています。本屋が生き残るために、お客さんにも協力してもらいたいと私は思います。どうか皆さん、本屋の味方になって下さい。新年そうそう暗い話でスンマセン!
(コプタ通信2005年02月号より)