オオツカトオルの「すバらしいですよ。」第2回
みなさんこんにちは、スタッフの大塚です。
今日も今日とて、世の中にすバらしいことはないかしら?と探している日々ですが、今回は僕の代わりにすバらしいことを見つけてくれた人々のニュースから。
ブロンズ新社/お知らせ/2017年2月17日より、ブロンズ新社刊の絵本「もうぬげない」(ヨシタケシンスケ作・絵)がイタリアの「ボローニャ国際児童図書賞(ボローニャ・ラガツィ賞)」において、フィクション部門特別賞(入選に相当)に選ばれた、というニュースです。なお発表は2月でしたが表彰式が行われるのは4月、「ボローニャ チルドレンズ ブックフェア」で行われるそうです。そのころにはもう少し大きなニュースとして取り上げられるかもしれません。
ボローニャ・ラガツィ賞、あんまり耳なじみのないこの賞の歴史はけーっこう古くて、始まったのは1960年代。もう50年以上続いている歴史ある賞です。また各賞の受賞作はボローニャチルドレンズブックフェア内で開催される原画展で展示された後、世界順展されます。僕も昨年、東京都板橋区にある「板橋区立美術館」に2016年の巡回展である「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」を見学に行ってきました。世界中の素晴らしい新刊絵本から選ばれた作品の原画が数ページだけ展示されるこの展覧会、「??どういう話なの?」「この本、手にはいるの?」と読みたがりの私にはかなりモジモジしてしまう内容で、会場を出てからスマホでポチポチポチポチと急いで作家名検索していた記憶があります。今年はこの原画展が世界を巡回されるなかで、いろんな海外の方が「Shinsuke Yoshitake」とか「Still Stuck」とか検索するのかな?と思うと、ちょっとワクワクします。
ちなみに「Still Stuck」は「もうぬげない」の英語名で、本家、ボローニャ・ラガツィ賞のサイトでもこの名前で紹介されています。
「もう ぬげない」は「まだ つまってる」なんですね。面白いです。
というわけで今回の「すバらしい」は、「ヨシタケシンスケ」さんです。
さて、先の「もうぬげない」だけでも
- 絵本の専門誌として全国で発売している月刊誌「MOE」さんが主催の第9回「MOE絵本屋さん大賞2016」で第1位
- 百町森の地元、静岡で開催されている第5回「静岡書店大賞」で児童書部門第1位
- 全国展開している書店「リブロ」さんの第7回「リブロ絵本大賞」で入賞
と、各所で絶賛されています。さらにMOE絵本屋さん大賞、静岡書店大賞では第2位もヨシタケさんの絵本「このあと どうしちゃおう」で受賞されており、ワン・ツーフィニッシュ。新刊絵本ではヨシタケイヤーと言っても過言ではない活躍ぶりと言っていいのではないでしょうか。
もちろん百町森でも取り扱っております。
もうぬげない
「シャツが脱げない」という未だに僕も体験する恐怖のシチュエーションについて描かれた絵本です。パニックに陥っても大きな声を出して取り乱すことなく、対処?する主人公の姿にあこがれすら覚えます。いや実際問題、肌への密着度が高いアンダーシャツって脱ぎにくくないですか?!
このあと どうしちゃおう
誰にも訪れる肉親の死というシチュエーションがテーマの絵本です。亡くなったおじいちゃんは幸せな死を迎えたのだというよくある一面から、もう一歩そっと踏み込んだところがこの本の大きな意義ではないでしょうか。
僕が感じるヨシタケさんの絵本の魅力は、誰にも起こりえるシチュエーションで主人公たちが至る“奇想”、“妄想”その斬新な切り口とその手数。そしてシンプルでやわらかくてなじみやすいタッチの線です。そこがグググっとクローズアップされているのが、ヨシタケさんの作品集です。
いろいろあるのですが、一冊挙げるならば「そのうちプラン」(遊タイム出版、2011年)です。ヨシタケさんが保管している膨大な手のひらサイズのスケッチからシンプルに抜粋という形をとっている作品集では現在もっとも新しいものです(「デリカシー体操」という作品が昨年発売されましたがこれはもっと古いスケッチの再編集版です)。街の声を拾ったものなのか、妄想の産物なのか、虚虚実実、クスッと笑えるスケッチ(もはや1コママンガ)が繰り広げられる中、ページ番号も振られていない154ページにそっと描かれた1点のスケッチ。これ以降に描かれるスケッチが大きく方向性を変えること、そして2013年の「りんごかもしれない」に始まるヒット作品連発の起点になったのだろう、1点のスケッチ。ぜひご覧いただきたいんですが、今のところ百町森では取り扱っておりません。探してみてください!
なお、ヨシタケさんは4月、5月とドンドン新作絵本を発表されるようです。2017年も注目のヨシタケシンスケさんに期待しています!