暮らしのあれこれ83 人生フルーツ
「人生フルーツ」映画です。すでにご覧になった方もいらっしゃると思います。静岡でも3/4からシネ・ギャラリーで上映されています(3/17まで)。
私はテレビ放映(東海テレビ製作・平成28年度文化庁芸術祭テレビドキュメンタリー部門大賞受賞)を見ていたのですが、再度、劇場版も見ました。全国のあちこちで追加上映が決まったりしてロングランが続いているようです。この映画、劇場でのお客さんは比較的高齢の方(50代以上)が多かったのですが、実は若い方もとても感動してくださるのです。それぞれの年代で感じることがたくさんあるのです。まさしく時代が求めている作品だと思います。
人生は、だんだん美しくなる。四季折々の暮らしのコツ、ここにあります。
愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンの一隅。雑木林に囲まれた一軒の平屋。それは建築家の津端修一さんが、師であるアントニン・レーモンドの自邸に倣って建てた家。四季折々、キッチンガーデンで育てられた70種の野菜と50種の果実が、妻・映子さんの手で美味しい御馳走に変わります。(中略)自ら手がけたニュータウンに土地を買い、家を建て、雑木林を育てはじめた修一さん。あれから50年、二人はコツコツ、ゆっくりと時をためてきました。(後略)
(映画チラシより)
さて、このお二人の本がまた、素晴らしいのです。ききがたりなので、文体が口語体で、とても読み易く、写真もとても美しいです。お二人は自由で、自給自足的な生活ですが、これが高度成長期時代に造成された大きなニュータウンでの暮らしというところが興味深く、かえって身近に感じられます。ずっと専業主婦の映子さんの暮らしや、夫婦、家族の関係、社会とのかかわり方には生きる上でのヒントがいっぱいです。
たとえばこんな文章です。
自分に関係ないことなんかない
欲しいものはお金で買えて、便利になって暮らしは豊かになったというけどほんとにそうかなと思う。(中略)なんか変な世の中になっちゃいましたね。(中略)世の中どうなっていくんだろうと思いますよ。(中略)お父さんがよく言ってたけど、世の中のことで、自分に関係がないことなんか、ひとつもないと。政治だって、経済だって、直接自分が関わらなくても、1人1人が考えたり感じていないと、気づいたときには、大変なこと にまき込まれてしまっているって。「手遅れ」ということにならないといいけど、あの太平洋戦争がそうでしたものね。
(「ふたりからひとり」より抜粋)
自分のライフスタイルを守りながら、いつも社会にも関心を持ち続けていられる、とても自立している方だなって思います。
映画の中に出てくる、お料理、お菓子、保存食、どれもこれも美味しそうですが、本にはそれらのレシピも登場します。映画を見た方も、そうでない方も是非読んで下さい。おすすめです。