'08年に出版された本で印象に残ったものその10

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『シズコさん』佐野洋子/著
 『100まんかいいきたねこ』『おじさんのかさ』などの絵本作家としてもあまりにもビッグな方である著者だが、この人が書くエッセイはまた格別に面白い。ちょっと世の中を斜めに見ている感じもいいし、きれい事を言わないのもいい。その方が、今度は自分のお母さんのことを書いた。シズコさんとはその母親のこと。子どものころからの事を書くので、自ずと自伝的エッセイとなった。
 さて、そんなわけだから、登場する人たちは皆身近な人たち。その人たちのことを赤裸々に書いてしまう。それっていいの!? 読む側はハラハラ、ドキドキの連続である。
 一つの盛り上がりは子どもの頃の事、自分は母親から虐待を受けていたと思うほどの体験。本当に母が愛していたのは死んでしまった兄なのではという思い。
 次の盛り上がりは、東京に出てきてから、叔母さんの家にお世話になるところ。さらに、母までも弟の嫁と合わなくて、ついに女手ひとつで稼いで建てた家からも出て自分と暮らすようになってからのことも。
 そして、最後にその母を施設に入れることになってからのこと。お金で捨ててしまったという思いの中で、でも、ぼけてしまった母に生涯で初めて「ありがとう」と言われる瞬間。
 一気によんでしまった。世俗的な話ばかりなのに、なぜか神聖なものを感じてしまう。本当に愛をもらえる本だと思う。最後は泣けました。
本体価格1400円。

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