こぐまのくまくん

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数ある松岡享子さんの翻訳された絵本の中でも『こぐまのくまくん』は私(柿田)が一番好きなものです。

これは福音館書店発行の〈はじめてよむ童話〉シリーズ全5巻の第1巻です。この1巻の中には4つのお話が入っているのですが、特に最初話「くまくんとけがわのマント」は本当にしびれます。

?外は雪が降っている。くまくんは寒いので、かあさんぐまに「なにかきるものがほしい」と頼む。するとかあさんぐまはぼうしを作ってくれる。そこでくまくんは外に遊びに行く。が、すぐに帰って来て、また「寒いから、なにかきるものがほしい」と言う。

こんなことを3回繰り返し、かあさんぐまはズボンやオーバーまで作ってあげるが、くまくんはまだ...。さすがに4回目になるとついに...。(結末は大変微笑ましいものです。)

このストーリー展開には子育てに関しての重大な真実が隠されている様に私は思います。

子どもを冬散歩に誘おうとすると、子どもは風の子だからと薄着で行かせようとしても、なかなか寒がって嫌がる。しかたなく厚着させる。でも、帰って来る頃には自分から薄着になっていたりする。単純にそんなことを言っているようでもあります。

また、あるいは、3回願いをきいてあげたということは、日頃沢山子どもの要望をきいているという意味で、そうすれば親のいう事もたまにはきいてくれるという意味にとれない事もありません。

児童精神科医の佐々木正美先生は子どもの要望をきいてあげることが親子の信頼関係を作ることになると言ってます。このストーリーはそんなことを言っているようにもとれます。

私はこの絵本に学生の頃出会い大変感動しました。「絵本っていいなぁ」って思って、それからいろんな絵本を読む様になった切っ掛けの一冊です。他にもその頃出会って感動した絵本と言えば、『はなをくんくん』『げんきなマドレーヌ』『ふたりはともだち』などです。これらの絵本は今でも私の心の中で宝石の様に光っています。

つまり、いい絵本というのは若者にも、親にも、もちろん子どもにも、そして年とっても(そろそろ私のことです)いいってことでもありますね。

ちなみに、このくまくんのシリーズでは、『だいじなとどけもの』も面白いです。

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