読み聞かせに向いている絵本 3 『くんちゃんとふゆのパーティー』
今月は『くんちゃんとふゆのパーティー』という絵本を紹介します。
《内容》冬が近づきました。熊には冬眠の季節です。でも子熊のくんちゃんは冬ごもりなんかしたくありません。雪を見たこともないのです。お父さん熊はもう少し起きていることを許してくれました。
しばらくして降って来た雪。くんちゃんは嬉しくて、観察したり、つかまえようとしたり‥。少し積もったところで、駆けて足跡を付けたり、お母さん熊と雪だるま(くま)を作ったり。
ところが、小鳥やリスたちは、雪が降ると食べ物探しに困ることを教えられます。そこでくんちゃん、食べ物を家から持ってきて、枝に吊るしたり地面にまいて、小さな動物たちのためにパーティーを開いてあげました。
くんちゃんはお父さんのためにも家でもパーティーを開こうと考えました。そこで、ツリーを飾り、お母さんのクッキー作りを手伝いました。準備も整ったところに出かけていたお父さんが帰ってくるのですが‥。
なんとほのぼのとしたストーリーでしょう。このこぐまを主人公にしたこの〈くんちゃんシリーズ〉は岩波書店、石井桃子訳の『くんちゃんのだいりょこう』以外はペンギン社から6冊出ているのですが、どれもみな子熊のくんちゃんに対して、親熊の愛情の素晴らしさに感心してしまいます。それは、この本の訳者あらいゆうこさんが後書きに書いている通り「著者の幼い子どもたちに対する限りない愛情と理解がすみずみまでいきわたっている」からでしょう。誰かに言われたからではなく、自発的に子どもが判断したり、行動したりすることを、親は深い愛情で見守っている─子どもに読んでいるはずが、親の自分も襟を正さなくてはと思ってしまいます。
クリスマスという言葉は一つも出てこないけれど、どう考えてもクリスマスの話です。クリスマスという言葉がタイトルに付いていれば、あるいはもっと売れている絵本だと思います。でも、その言葉を出さないところも逆にいい。そのへんには、著者の大事な意図があるのかも知れません。真意は分かりません。でも、どうしても、クリスマス前のこの時期に読んでやりたくなる絵本です。
集団で読む場合には、少し絵が小さく、線画でインパクトが弱いので、読み聞かせに慣れている子どもたちならOK、傍に寄ってもらってから読むといいですね。
ドロシー・マリノ作・絵、あらいゆうこ訳