6.インコグニトについて
通常私は、ある新しいゲームのメカニズムを考案する(多くの人はこの概念を嫌うが、私は好きだ)。テーマは私にとってそれほど興味がない。なぜなら、私は抽象的な美学にどちらかというと言及を持っているから。それは「インコグニト」でもそうであった。私にはすでにゲームの基礎があった。
その後、レオ・コロヴィーニが、あるゲームを持って私のところに来た。コロヴィーニはゲーム好きの若者だ。私はもうだいぶ前からチェスクラブで彼のことを知っている。彼はチェスが上手い。
彼は、アイデアは良いが一般的には遊べないゲームを、しばしば私のもとに持ってくる。なぜなら、彼は役割と終わりのないゲームの場面がむしろ好きだからである。1時間以内に終えることのできないゲームなら、それはもう私たちが求めているものではない!コロヴィーニは7時間も続くゲームを作る。そのうえ更に、ファンとマニアに対しては一生涯続くものを。彼が私のところに持ってきたものは、彼の他のゲームより多少は人間的なものだった。というのは、それはとても推理的なものだった。しかし、推理的なゲームは実際にはあまり面白くない。
むろん彼は他のゲームも制作した。そして、それはすぐに私を魅了した。すなわちそれは、カーニバル中のベニスを舞台にした探偵ゲームだった。そこで私は、彼に一緒に仕事をしようと誘った。そのテーマは全く新しいものだった。3枚のカードのうち1枚が真実に違いないというメカニズムもまた新しいと思う。また、誰が味方かわからないということも、ボードゲームでは新しかった。そのような状況は、今までカードゲームにしかなかった。
インコグニトの素晴らしさは、私がほとんどの開発を自分の思うようにしたことだ。このベニスにいる上手な旋盤工が、私の試作のためのゲームの材料を私のデザイン通りに作ってくれる。(そのため私が現在作っているものは、全て丸い形をしている)MBの人々が私にとても信頼を寄せてくれるのが、私にとって素晴らしいことです。それに、グラフィック担当者と全てについて相談し、決定することができた。(我々が賞を得たことを、彼らは非常に喜んでいる)ゲームのルールは私の望むようにできた。またゲームの材料も私のオリジナルに対応している。
いずれにせよ「警告のしるし」は、将来柔らかいプラスチックで作られ、それほどうるさくはなくなるだろう。
訳注
「インコグニト」Inkognito (Milton Bradley,1988) (Winning Moves,2001)(1988年ドイツゲーム大賞特別美術賞受賞)
レオ・コロヴィーニ (Leo Colovini) 1964年ベニス生まれ。 Drachenfels(Schmidt Spiel,1986)をランドルフと共作してデビュー。そしてインコグニトでもランドルフと共作し、1988年ドイツゲーム大賞特別美術賞受賞を受賞。その後、 「カルタヘナ」Cartagena (WinningMoves,2000)で2001年ドイツゲーム大賞ノミネート、「クランス」Clans(WinningMoves,2002)でも2003年ドイツゲーム大賞ノミネートなど若手として活躍している。
「警告のしるし」(Menetekal)はインコグニトでサイコロ替わりに使われる部品。中にカラーボールが入っていて、振って出た色にしたがって移動する。
補足(2017年5月3日)
このインタビューのドイツ語原文(Alex Randolph im Gespraech)はspielbox-onlineに掲載されていましたが、現在では削除されています。アレックス・ランドルフ氏ご自身から承諾を得て翻訳を掲載しています。
補足(2021年1月19日)
このインタビューは、「spielbox-online」に掲載されていましたが、元々の記事は、1988年の「Poeppel Revue」誌である。