ドイツの旅99(佐々木)

1999/02/04●メッセ初日〜ネフ、ヘラー

6:30過ぎ起床。まったくよく眠った。私と相沢氏の眠るベッドは、よく見ると人形用の「白木ベッド50cm」にそっくりである(というよりも、白木ベッドがこれにそっくりと言う方が正確か)。相沢氏が「おはよう、ジルケ」「素敵な朝ね、スタプシィ」とおネェ言葉で言ってふざけている。7:00からの朝食は、丸いパン・黒パン・ハム・チーズ・バター・ジャムとコーヒー。これが実にうまい。相沢氏は、丸いパンを横にカットするコツを掴んだ模様。 Wittmannさんの車で女性の民泊先へ。彼女たちがお世話になっている方は、Frau Cornelia Leggraaffさんと言う女性。「すごーく素敵な部屋で、朝食も優雅だった」といって川島さんが感激している。我々も白木ベッドの話をする。車でメッセ会場まで送ってもらう。南門から入り、クロークにコートを預ける。

今年で、50周年を迎えるこのメッセ(ニュルンベルク国際玩具見本市:International Toy Fair)は、世界最大のおもちゃの見本市で、ヨーロッパの見本市の中でも最も歴史の長い部類に入る。55ヶ国からおよそ2900の出展者が集まり、1週間に渡って開かれる。メッセ会場は14の大きなホールからなり(平均すると、一つのホールに200の出展者が軒を並べていることになる)、我々にとって興味のある木製おもちゃや人形が1〜3号館、その他に絵本とゲームの11号館、クリスマス関係が7〜8号館、鉄道模型が4号館と、まぁざっと一通り見るだけでも1日は必要なほどのとんでもない規模。

基本的には、商品の販売は行わず、あくまで商談・契約の場である。日本では、小売店がメーカーから直接商品を仕入れることはまずない(大抵、間に問屋さんが入る。特に輸入品については、税関の手続きやらロットの問題やらあって輸入代理店がいないとまずできない)が、ヨーロッパでは小売店が直接買い付けるので、このようなメッセで小売店はメーカーから色々な商品を仕入れる商談を行うのだ。だから、われわれが色々なブースを見て、面白そうな商品があったとしても、直接仕入れるわけにはいかないので、普段お付き合いしている問屋さんに「あそこで、こんな面白いものがあったから是非仕入れて欲しい」とお願いするしかない。あとは、自分用に少しだけ売ってもらうようにメーカーと話しを付けるくらい。それでも、普段なじみのメーカーをより深く知るためにも、知らないメーカーや商品を知るためにも、このメッセに参加することは大きな意味がある。

まずは1号館入口近くのNaef(ネフ)社のブースへ。黒を基調としたブースのデザインはシックで落ちついた(coolな)雰囲気。お金もかけているのだろうが、他社のブースとは一線を画しており、ネフが業界の中でどういう位置を目指しているのかが象徴的に表れている。Heiko Hillig(ヘイコ・ヒリック:レインボウなどのデザイナー兼ネフ社のチーフ・デザイナー)さんのRainbowとプロトタイプが前面に並ぶ。ネフ社は例年、このメッセにプロトタイプを展示して、商品化するかどうかの参考にしているそうだ。相沢氏のViaや、相沢氏のパフォーマンス用の看板(相沢氏の顔写真とプロフィールが書いてある)もある。「アトリエ・ニキティキ」の西川さんも登場。創業者のネフ(Kurt Naef)さんも登場。メッセ直前まで作っていたというおもちゃの試作品を見せてくれ、相沢氏をはじめわれわれのようなデザインに関わらない人にも意見を聞いている。相沢氏は「(創作玩具公募展では)審査委員長として、俺のおもちゃを審査する立場にある人が、このおもちゃをどう思うか、って俺に聞いてくるんだからホント、ネフさんってすごいよなー」と感心している。本当にその通りだと思う。自分のアイデアを絶対とは思わない、その柔軟な精神がネフさんのネフさんたる所以なのかもしれない。直前まで試作品を作っていたことをうれしそうに話してくれる様子も、本当におもちゃが好きなんだなー、とつくづく感じることができてこっちもうれしくなってくる。もしかすると、ネフさんは1957年にネフスピールを作って以来、ずっとこんな感じでおもちゃを作ってきたのかもしれない。

Erzi社で、「おもちゃの子庫」の原さんと会う。今回の旅では、民泊先の手配や、幼稚園の見学などでお世話になっている。幼稚園の件は、まだ確認が取れていないとのことで、再度待ち合わせする。Erzi社は木製玩具のメーカーで、ままごと用の食べ物、パソコン、携帯電話、カラフルバランスやたまごタワーなどのゲーム、といったすでに我々が見慣れている商品のほか、絵の具ブラシ(露木さんによると、触感を楽しむおもちゃとして乳児にもすごく良さそう)や新商品の化粧品シリーズもあった。相沢氏はおもちゃのレジ台の中のおもちゃのお金が気に入った模様。でもこれは商品ではないようだ。原さんは、Erzi社の人とドイツ語でガンガン商談をしていて、切れ者ぶりを発揮していた。

アドラー社のブースではサッカーゲームが面白く、みんなで盛り上がる。手人形のEri社は紙袋を利用したディスプレイが美しかった。モビールのヘラー社の小さなブースには、2代目のラルフ・ヘラーさんと3代目のヤーン・ヘラーさんがいらっしゃった。2人の顔がそっくりで微笑ましい。ヤーンさんはまだ若そうであるが、すでに多くのデザインを商品化しており、今後が楽しみである。柿田氏は百町森の店の中の写真を持ち歩いていて、ここでも見せている。ラルフさんは気のいいおじさま風で、お世辞にも「商売上手」とは言いがたいが、温かい人柄は充分伝わってきた。ドールハウス用の家具や食器などを作っているボードーヘニッヒ(Bodo Henning)のブースは広くて、全ての商品をディスプレイしたコーナーを7つも設けていて(7つとも全く同じ内容)圧巻であった。プレイアート(Playart)社のデザイナーであるベルンド・リーベルト(Bernd Liebert)さんのブースでは、染色した木のピースの裏側にマグネットを付けて、それを鉄板にモザイク状に並べるおもちゃ兼オブジェのようなものが並んでいた。とても美しくて、自分でも飾りたくなる。

その後、ニキティキの皆さんと一緒に昼食を取る。みんなはスープとパン。私はビールとスパゲティをいただく。

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