プーおじさんのおもちゃの旅2003
3 オストハイマー社とシュタイナー学校を訪ねる
ウルムを後に私たちはDBのインターシティーに乗った。やって来た電車はなんとフランスのストラスブルク行き、そこは憧れの絵本作家トミ・ウンゲラーの住む所ではないか。ひょいとやって来た電車がこんな風に国境を越えて行くというのも日本では考えられなく、感激してしまう。座る席がなかったので、こういう時は食堂車が便利である。コーヒーを飲んでいるうちに、あたりはだいぶ暗くなり、一時間ほどでゲッピンゲンに着いた。ここからさらにタクシーで20分ほど行ったツェルという田舎のレストラン付きのホテル(ガストホフ)が私たちの今夜の宿。ここは明日訪ねる予定のオストハイマー社の社長さんが紹介してくれた所だ。
さて、レストランで夕ごはんを食べようとすると、相席の気のいい年輩のご夫婦が「コリアンか?」と話しかけて来たので「日本人だよ。」なんて答えながら、肉料理以外のお薦めを訊いてみた。私はドイツへ入ってから肉ばかり食べていたので、ここらあたりで胃を休めようと思ったが、なかなかドイツ語のメニューを読むのは容易ではない。だが、この人たちのお陰でこの日はドイツ料理としては最小限のタンパク質に抑えることができたというわけだ。
次の日、オストハイマー社のシューレ社長がこのガストホフに迎えに来てくれた。美しい田園地帯を通り抜けて行くと、シュタイナー建築の社屋が現れた。木造なのか(もしかして屋内の見える部分だけ木を使っているのか)建物の中は温かみがあって快適だ。シューレさんはオストハイマー社の人形がどの様に作られていくか、その過程を丁寧に見せてくれた。
シューレ社長(後ろの絵は工場で働いている障害者によるもの)
まずジグソーで外形を切り抜く
回転サンダーで大きく面を取る
50人の中で8人の障害者が一緒に働いている
バフがけして表面を滑らかにする
絵付け(色を塗り、目などを描く)
絵付けの終わった出来上がった犬
最後に全体に塗装するためドブ漬けする
お連れ合いはカタログやパッケージのデザインをしているそうだ。オストハイマー社はマルガリーテ・オストイマーさんによって1965年頃に始まった(戦前のマルガリーテさんのお父さんの玩具メーカーにさかのぼるとさらに古い)。シューレさんは96年から経営を引き継いだそうだが、血のつながりはないということ。マルガリーテさんの甥のステファンさんは新商品デザインを任されているそうだ。その他従業員は自宅で仕事をする人も含め約250人ほど居るそうだ。障害者が働く姿も目にする。オストハイマー社は最近キンダークラムという会社を傘下に入れた。私の好きなケラー社も今はオストハイマー社に属している。シューレさんはいろいろなアイデアのおもちゃを売ることが結果的に会社としては強いのだと主張する。魅力的な考えだ。
昔のアイテム(194?年製)
シューレ社長(左)とデザイン担当のステファンさん(右)
シューレさんの好意でこの日、シュタイナー学校や幼稚園も見学する事が出来た。特に私は幼稚園のスケジュール表を見せてもらい、同じお話(ストーリーテリング)を3週間〜一ヶ月するという所に感動した。子ども達の心の深い所に物語が届いていくことを望むからだそうだ。今、日本の子ども達に「深い所に届く」ことを、私たち大人はしてやっているだろうか。
シュタイナー学校で。椅子の代わりにボールを使っている子がいた
斧を使って薪を割る
シュタイナー幼稚園のままごとコーナー
幼稚園の園庭は自然たっぷり