くるみ割り人形

今となっては、実際にくるみを割るわけではありませんが、くるみ割り人形は、エルツ山地の代表的なおもちゃのひとつです。

ザイフェン村のメインストリートにも大きな像が立っていたり、レストランの椅子がくるみ割り人形のデザインだったり(右写真)と、ある種の象徴ともいえます。

(2001年11月 柿田)

クリスマスの象徴ともいえるくるみ割り人形は、エルツ山地の特産品。王様や兵隊に硬いクルミを割らせたのは貧しい民衆のうっぷんばらしでもあったとか。

くるみを割る道具は、4百年も前からあったそうですが、人形の形になったのは、1650年のベルヒテスガデンか、1735年のゾンネベルクがオリジナルと言われています。その後、ドイツ各地の木工産地でも作られるようになりましたが、その姿は、現在のものとは全く違っていたようです。1745年のドレスデンのクリスマス市 Striezelmarkt には、ねじ込み式のくるみ割りがエルツ山地から出荷されていたそうです。

2冊の「くるみ割り人形」の本

くるみ割り人形が、人々に意識されるようになったのは、1816年に出たE.T.A.ホフマンの童話「くるみ割り人形とねずみの王さま」によってでした。その後、1851年にフランクフルトの医者ハインリヒ・ホフマン(「もじゃもじゃペーター」の作者)による絵本「くるみ割り王とあわれなラインホルト Koenig Nussknacker und der arme Reinhold」が出版されます。この絵本では、しゃくを持ち、冠をかぶったくるみ割り人形の王様やザイフェン名物のノアの方舟のおもちゃが描かれていました。

絵本から生まれた(?)エルツ山地のくるみ割り人形

この絵本はザイフェンのおもちゃ職人に、くるみ割り人形の製作を考えさせることになりました。ザイフェンのヴィルヘルム・F・フュヒトナーは、1870年からくるみ割り人形を作り始め、「エルツ山地のくるみ割り人形の父」と呼ばれています。特に1925年以降の王様タイプは、エルツ山地のくるみ割り人形の原型と評されています。

くるみ割り人形は、いい人だけを表現したものではありませんでした。権威の典型がくるみ割り人形として登場しました。気味の悪い笑顔は、皮肉や無言の抵抗、社会的な批評が現れています。兵隊や警察のような「権力」に硬いクルミを割らせることで、鬱憤をはらしてもいたようです。とはいえ、このような役割だけでなく、エルツ山地のくるみ割り人形は役に立ち、子どもたちの友達でもあったわけです。

(2005年11月 佐々木)


口を開けたところ(くるみを割ることはできません)

エルツのくるみ割り人形の父の伝統

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透かし彫りのコルベ

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ウルブリヒトのくるみ割り人形

ウルブリヒト社のくるみ割り人形は、品格のある表情が特長です。また、木の色を生かした白木のタイプは、ほかのメーカーには出せない落ち着いた雰囲気があります。

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