Grazie, Alex! #03
「こぶた」vs.「コブタ」
今年はアレックス・ランドルフさん生誕100年
2022年は私たちが敬愛するゲーム作家アレックス・ランドルフさんの生誕100年です。彼は1922年にボヘミア地方で生まれ、2004年に81歳でベニスでなくなるまで、数多くのゲームを作りました。あらためて、彼が生み出した素晴らしいゲーム作品と、偉大な功績に感謝したいと思います。ランドルフさんの最高傑作「すすめコブタくん」が登場したのは2001年。それから20年余、ずっとお薦めゲームの主役であり続けましたが、残念ながら廃番になってしまいました。
代わって登場したのが日本語版「こぶたのおんぶレース」。今回は両者を徹底比較します。こだわりのオリジナル版「すすめコブタくん」か?それともコスパ抜群の日本語版か?あなたはどっちにする?
コプタ通信2022年5月号別冊より(PDF版352Kをダウンロード)
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日本語版 |
オリジナル版 |
こぶたのおんぶレース |
すすめコブタくん |
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「こぶた」vs.「コブタ」
いずれの写真も、左が「こぶたのおんぶレース」(日本語版)、右が「すすめコブタくん」(オリジナル版)です。
コマはほぼ同じ
ボードには違いあり
「おんぶレース」が少し小さめサイズ。止まるマスは、くっきり丸い形から、濃い色の(泥んこ?)広いエリアになって、マスとそれ以外の部分との判別が難しくなりました。ただ、道の脇に「どんぐり」を置くことで、わかりにくさを回避しています(逆に、コブタのコマが止まっていても、どんぐりのおかげでわかりやすいかも…?ただ、残念ながら、箱にもルールにもどんぐりのことが書かれていないため生かし切れていません)。
また、オリジナル版の道は脇に草が密生して、視覚的にも、また心理的にも、周囲の草原と明確に区切られています(ルールの中にも、「道はとっても狭いので、飛び越えたり、背中に飛び乗ったりしないと前に進めません」と書いてあり、舞台とルールの必然性が描かれています)が、日本語版では色だけで区切られています。先程の「マス」と合わせて、子どもにとっての認識しやすさ・遊びやすさに影響する可能性があります(この辺りは子どもと遊んでみないとわかりませんが)。
サイコロはオリジナル版のドットがよい
「おんぶレース」のサイコロの目はドット(点)ではなく、数字です。ドイツの子どもゲームでは、「幼児期は数字がわからない」前提なので、数字を使うことはめったにありません。今回は日本のデザインなので、そこまで配慮していないのかもしれません。
「1+」の「+」は、「もう1回サイコロを振ることができる」という意味、「3+」の「+」は、「自分のこぶたが最下位だったときは、もう1回サイコロを振ることができる」という意味です。このアイデアは悪くないのですが。
木製ディスクは日本版がやや上
「おんぶレース」はほんの少し大きく、写真ではわかりませんが、厚みがあります。日本語版の、鼻シールを貼った面が表になり「使ったら裏返す」というルールはわかりやすい。
パッケージとボードの一体感
Rolf Vogt ロルフ・フォークト氏はドライマギア社の代名詞になったイラストレーターで、パッケージやボードのイラストは可愛く楽しげで、素晴らしい出来栄え。さらに、道の脇に背の高い草が密集しているだけでなく、黄色い花や薄紫の花などが描かれていますが、ちゃんとボードの絵と一致しているんです!パッケージに描かれた世界と、ボードで実際に体験する世界観がつながっている。よい絵本の表紙と同様、箱を手に取ったところから、今から体験する世界に入っているわけです。ここまで、考えられているのは、ドイツ語版ならではの雰囲気です。
ルールのクレジット表記へのこだわり
オリジナル版のルールには、作者に加え、絵、デザイン、編集がクレジットされ、「作品」として扱われているのを感じます。また、コブタを使った積み木遊びのパターン(右写真)も掲載されています。もともとは、ドライマギア社の社長夫妻のお子さんが、こぶたのコマで積み木遊びを始めたことから、それを面白がってパターン表まで作ってしまったもの。この遊び心がいいです。
ランドルフNEWS
ランドルフさんのゲームで遊ぼう!
お誕生日の5月4日、命日の4月27日の頃に合わせて、ランドルフさんのゲームで遊んだ写真をSNSに投稿しませんか?ハッシュタグは「#alex100」、主催は先々月ご紹介した「ALEX RANDOLPH 100TH BIRTHDAY実行委員会」さんです。