クリスマスのおもちゃ選び

地味だけど、日々成長する子どもの遊びについていけるおもちゃも与えたいよね(お話:樋口正春さん)

子どもは大人が思いこんでいるほど、電池で動くおもちゃやキャラクターものばかりが好きなわけではない

rousoku

私は、ドイツの幼稚園を訪れることも多いのですが、そこでは、これから紹介するような、積み木・ブロック類、木のレールセットなどが使われています。日本のテレビのコマーシャルで流れているような電池で動いたり、電子音が流れたり、キャラクターがついているおもちゃに比べると、地味でおとなしめのものばかりですが、いつも家で派手なおもちゃに囲まれているはずの子どもたちが、この地味なおもちゃで、大変よく遊ぶのです。本当に、はじめてそれらのおもちゃに接したときなどは、“ガツガツ”と遊びますね。

子どもって実は、大人が思いこんでいるほど、派手なおもちゃばかりが好きなわけじゃないんですよ。それらのおもちゃはそれなりに楽しいのでしょうが、それ以外の楽しみも求めているのです。

その楽しみというのは、「子どもが本来持っている、達成したい、成長したい欲求を満たすこと」だと、私は思っています。積み木やブロックを使って自分の力で何かを作り上げ、今日は昨日よりもっとすごいものを作ろうと頑張る。これが、子どもたちにとっては楽しみなんですね。電池で動くおもちゃは、自分で何もしなくても勝手に動いてしまうので、この達成欲を満たすことができないのです。

そして、こんなふうに楽しく遊んでいるうちに、考える力、創造力、手先の器用さ、集中力、根気など、大人が子どもに身につけさせたいと思っているいろいろな力が自然と身についていくわけです。

このような力は、毎日の遊びの中でちょっとずつ、でも確実に成長していきます。そして、いろいろな能力が毎日すこしずつ発達していくにしたがって、子どもの遊びも少しずつ形を変えていきます。だから、長い間同じおもちゃで遊んでいても、子どもにとっては毎日違う遊びをしていることになるわけですから、あきないのです。その点、電池で動くおもちゃなどは同じことの繰り返しでしかないので、すぐあきてしまいます。

だから私は、必然的に「子どもの発達を促すいいおもちゃ=長い間あきずに遊べるおもちゃ」になると考えています。今回はそんな視点から「長く遊べるおもちゃ」を選んでみました。

クリスマスはいい機会だから、親が与えたいおもちゃをサンタクロースからプレゼントさせたい

でも子どもをおもちゃ屋に連れて行くと、派手な音がしたり、電池で動いたり、ヒーローもののおもちゃをほしがりますよね。子どもはどうしても刺激の強いものにひかれますから、こういったおもちゃをほしがるのも自然のことだと思います。そして私は「こんなおもちゃは絶対与えてはいけない」とまでは考えていません。子どもの「ほしい」という意思も大切にしてやりたいですから。

私自身も、クリスマスや誕生日などの“ハレの日”には、子どもがほしがるおもちゃを買ってやってもいいと思っています。しかしそういうときにも「お父さんはこういうおもちゃは好きではない」ということを子どもに伝えるようにはしています。そして子どもがほしがるおもちゃとは別に、自分が子どもに与えたいと思うおもちゃも買うようにしていけばいいのではないでしょうか。

クリスマスは、そういった意味ではとくにいい機会ですよね。私は子どものほしがるおもちゃはお父さんからと言ってプレゼントしてやり、その一方で「サンタクロースはたくさんの子どもにプレゼントをあげなきゃいけないから、何がほしいかお願いは聞いてられないんだよ」と言って、自分が与えたいおもちゃをサンタクロースからプレゼントさせるようにしています。

これだけ子どもにとって刺激的なおもちゃがあふれている時代に、パッと見では子どもの興味をひきにくいけど本当にいいおもちゃを与えたいと思ったら、大人がそれなりのストーリーを作るしかないんじゃないかな、と思いますね。

保育創造セミナー代表 樋口正春

(プチタンファン 1996年12月号特集記事より抜粋 )

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