17 保育セミナーで自分達も勉強しました
樋口さんは、随分前から、「保育創造セミナー」を各地で開いていました。
初めて百町森がそれに関わったのは河口湖畔で行われた、1990年の頃のことでした。樋口さんは保育の話をしながらドイツの幼稚園の映像などを見せていて、これが本当に目からうろこ…。当時、樋口さん以外の講師としては、市村久子さんが絵本の話を、そして、まだ現役の保育者だった露木大子さんや林素子さんもいました。二人は「さあ、今日はいっぱい遊びましょう。」なんてピチピチと挨拶して、『わらべうたであそぼう』に出てくる唄や、『世界の子どもの遊戯集』に出てくる集団でするゲームを次から次へと参加者に披露してくれました。会場内は絶えず保育者たちの歓声につつまれていました。
私にとって、この領域は全く初めてだったわけで、かなりのカルチャーショックでした。そしてこれを機に、樋口さんだけでなく、露木さんや林さんに何度も静岡に来てもらい、保育者や親のための講座を開きました。市村さんにも2度来てもらいました。これは私たち自身の勉強という意味もありました。そうしているうちに、私たちの熱意が伝わったのか、保育のスタイルを変えようとする保育者が少しずつ増えてきました。
その中で、最も熱心だったのが静岡市のあけぼの保育園でした。園全体で取り組みたいと言ってくれたので、保育園を会場として借り、百町森から提案をして講習会を企画しました。そして講師料の不足分を他の園も誘って補うようにしました。この企画は大成功でした。次第に県内各地から、大勢の保育者が集まるようになり、こちらが驚くほどでした。
従来、日本の保育は、先生の指導のもと、子ども全員一斉に同じ事をさせます。樋口さんの提案する保育というのは、部屋にいろんな遊びのできるコーナーをいくつか作って、一人一人の遊びを保育者が援助するというものです。こうすることによって、子供たちがより安定し、より意欲的に保育室で一日を過ごせるというのです。さらに、樋口さんは、「子どもの遊びは真剣なものであって、決してふざけることではない。」と言います。
考えてみると、今の世の中、大人が率先してふざけています。子どもの気をひくために、大人はまるでテレビタレントでなければならないかのようです。そして、保育者も芸人のようになっている人がいます。でも、そうなると、芸をしてない時は、子どもは部屋で走り回るしかなくなっちゃいます。さもなくばビデオを見せられていますね。悲しい。
(コプタ通信2005年09月号より)