ロングセラー
〈子どもの読書の目標は?〉
こんな質問をされたら私は迷わず『ライオンと魔女』『ゲド戦記』『モモ』『ホビットの冒険』『ドリトル先生…』『クマのプーさん』『トムは真夜中の庭で』などのファンタジーの傑作や、『二年間の休暇』『若草物語』などの古典童話を中・高生位までに読む(読んでもらう)ことで、大人になってからの内面的支えにすることだと答えるでしょう。
では中・高校生になってそういうものを読む子は、幼児期にどんな絵本に接した子なのかと考えます。そこで思いつくのは言葉が綺麗で絵にも物語がある、時間のふるいにかけられてもなお残っているロングセラーの絵本と出会うことではないか、そのことで「本って楽しい」とうい原体験を持った子なのでは…と、私は思います。
ここではそんな絵本を紹介します。でも、こうした本は一見地味で子どもが手に取らないこともあります。是非、大人が選び取り、意識的に読んであげて欲しいのです。
ここに取り上げたのはロングセラー絵本のごく一部です。ご興味おありの方は!『よみきかせのきほん』『絵本の記憶、子どもの気持ち』…などガイドブックも参考にどうぞ! 百町森・柿田
〈優れた絵本は大人も幸せにします〉
優れた絵本に出会うと、大人でも絵と文章が見事に絡み合っていて満足感を覚える事があります。歴史的にはブルックやポターの登場する一世紀以上前の時代に、それまでの文が主、絵が従という形式から、文と絵が対等になる絵本が登場したと言われています。それには絵そのものにも物語性があり、さらにページをめくることが時間の経過を表すようになります。したがって、絵本を読む楽しみは、こうした絵の物語性を読むことや、ページをめくる期待感などが付加されたといえます。歴史に残るくらい優れた絵本(ロングセラー)ともなると、文と絵のコラボは大人も脱帽するほどです。こうした本との出会いは子どもはもちろん大人も成長させてくれるのです。〈絵が物語をさらに深くしています〉
『だれかしら』『たまごのあかちゃん』『しろくまちゃんのホットケーキ』など、小さな子でさえ絵本の絵を読みますから、三歳を過ぎた子ともともなると、「絵を読む力」もさらに強くなり、作品もそれに呼応するように深いものになります。例えば●『もりのなか』では、散歩する動物はみな最後尾につながっていくのに、ウサギだけが終始「ぼく」のとなりにいます。これは「ぼく」とウサギが特別な関係をしめしていると考えられます。また、●『げんきなマドレーヌ』ではパリの風景を随所に織り交ぜていて絵探し的にパリ探索ができます。(解答もあり)●『ペレのあたらしいふく』では、ペレの労働の意味が最後の教会の場面で暗示されています。●『てぶくろ』では絶対に入るはずがない大きさのいろんな動物が手袋に入っていきますが、画家の技量で家のように変化していく手袋が読者に違和感を与えません。●『おおかみと七ひきのこやぎ』ではストーリーには存在しないお父さんやぎが肖像画に登場したり、物語の陰に隠れて全体を見守っているかのようです。●『どろんこハリー』は文で始まるストーリー以前から絵で物語が始まっていることに注目してください。<日本の創作絵本の幕開け>
日本の創作絵本の幕開けは「こどものとも」からと言ってよいでしょう。『ぐりとぐら』などすでに半世紀以上の歴史のある絵本も生まれています。言葉が綺麗でリズムのあるものが多く、読み聞かせなどにも大変むいています。遊び心とユーモアあふれる絵本も多く、林明子さんの絵本など絵探しをしながら読み進めるものもあります。
<豊かな言語表現としての絵本>
『もこ もこもこ』という絵本を私はまだほとんど言葉の出ない二歳前のわが子に毎日のように読んでいました。ある日突然その子が一人で絵本の文章を声に出しながらページを開いていく現場を目撃しました。この時の私の感動といったらありません。その時以来、絵本を読んであげるという行為は、直接言葉や文字を教えているわけではないのに、読んでもらった子どもたちは結果的に言葉や文字を貯めこんでいるのだと思うようになりました。こうした内面に貯めこむ言葉を「内言語」、話したり書いたりするものは「外言語」というと聞いたことがあります。『かもさんおとおり』の作者マックロスキーは一枚の絵には一万語の文字が隠されていると言ったそうです。どうか皆さん子どもに優れた絵本を読みながら、親子で絵も含めた豊かな「言語」の体験をお楽しみ下さい。
四つのむかしばなし
金のがちょうのほん
- 金のがちょうのほん/レズリーブルック・瀬田貞二
- 1,800円+税(10%税込1,980円)
「三びきのこぶた」「三びきのくま」「親ゆびトム」など4つの昔話が入っている。本職...
- 著者:
- レズリー・ブルック
- 年齢:
- 4歳〜
ノルウェーの昔話
三びきのやぎのがらがらどん
- 三びきのやぎのがらがらどん/マーシャブラウン・瀬田貞二
- 1,200円+税(10%税込1,320円)
小中大三匹のやぎが谷川の橋を渡って草を食べに行こうとするが、橋の下に恐ろしい魔物...
- 再話:
- アセビョルンセン、モー(ノルウェーの昔話)
- 年齢:
- 4歳〜
チムシリーズ
チムとゆうかんなせんちょうさん
- チムとゆうかんなせんちょうさん(チムシリーズ1)
- 1,300円+税(10%税込1,430円)
船乗りになりたくてたまらない少年チム。ある日こっそり船に乗り…。文字数は少ない絵...
- 作:
- エドワード・アーディゾーニ
- 年齢:
- 5歳〜
ウクライナ民話
てぶくろ
- てぶくろ/エウゲーニーMラチョフ・うちだりさこ
- 1,000円+税(10%税込1,100円)
おじいさんが落とした手袋に次々動物が入っていき、とうとう…。絶対に入るはずのない...
- 再話:
- ウクライナ民話
- 年齢:
- 3歳〜
ピーターラビットの絵本01
ピーターラビットのおはなし
- ピーターラビットのおはなし/19年版
- 700円+税(10%税込770円)
ハラハラドキドキ、ピーターの冒険譚 いたずらっこのピーターは、お母さんの言うこ...
- 作・絵:
- ビアトリクス・ポター
- 年齢:
- 5・6歳〜
ピーターラビットの絵本02
ベンジャミンバニーのおはなし
- ベンジャミンバニーのおはなし/19年版
- 700円+税(10%税込770円)
ピーターはベンジャミンと再びマグレガーさんの畑へ! 前作で、上着と靴を脱ぎ捨て...
- さく・え:
- ビアトリクス・ポター
ピーターラビットの絵本03
フロプシーのこどもたち
- フロプシーのこどもたち/19年版
- 700円+税(10%税込770円)
フロプシーの子どもたち、危機一髪。 ベンジャミンは、大人になって、いとこのフロ...
- さく・え:
- ビアトリクス・ポター
ぐりとぐらの絵本
ぐりとぐら
- ぐりとぐら/なかがわりえこ・おおむらゆりこ
- 1,000円+税(10%税込1,100円)
野ねずみのぐりとぐらは森で大きな卵を見つけました。大きな卵からは、大きなカステラができました。子どもたちに圧倒的人気の絵本です。
- 作:
- 中川李枝子
- 年齢:
- 3歳〜
どうぶつあれあれえほん
だれかしら
- だれかしら/多田ヒロシ
- 600円+税(10%税込660円)
はじめて出会う絵さがし絵本。前のページの絵がヒントになって、誰が来たかわかるよう...
- さく:
- 多田ヒロシ
- 年齢:
- 1歳〜
ミセスこどもの本
ふたりはともだち
- ふたりはともだち/アーノルドローベル・三木卓
- 950円+税(10%税込1,045円)
かえるくんとがまくんによる心温まる5つの短編集になっています。2人はとてもいいコ...
- 作:
- アーノルド・ローベル
- 年齢:
- 1・2年生〜
グリム童話
ねむりひめ
- ねむりひめ/フェリクスホフマン・瀬田貞二
- 1,300円+税(10%税込1,430円)
ホフマンは一枚一枚の絵を実際に取材しながら描いたという。100年の歳月も小僧の帽...
- 絵:
- フェリクス・ホフマン
- 年齢:
- 年長〜