商品の説明

ある穀物商の元で働く二人の男のうち、一方は二ズウォティ、他方は六ズウォティの給料。二ズウォティの男が理由を聞くと、主人は通りかかった荷馬車の荷物が運んでいるものが何かを聞きに行かせる。男は戻って来てトウモロコシです、という。六ズウォティの男に同じことを言いつけると、行き先や取引き相手まで聞き出し、商談をまとめて戻る…。これは本書の中のロシア・ポーランドの民話です。

まだ、表題作は親孝行な非ユダヤ人と、祭司たちのパレスチナの話。このほかにも、中東のイラクやイエメンからドイツ、スペインなどヨーロッパ諸国まで、文字通り世界各国から38編の民話が収録されています。

登場するのも、王さまや皇帝から、ユダヤ教の指導者ラビやベドウィンまで様々。特筆すべきは、外国で編集されたものではなく、日本人による編訳であることでしょうか。素朴な昔話風のものから、ユダヤ人と非ユダヤ人の人びとの交流を扱ったものや、旧約聖書を出典とする宗教色のあるものまで多彩な内容で、ユダヤの人びとになじみのない私たちにも親しみやすい構成です。

あとがきにあるように、世界に向かって「新しい窓」を開いてくれます。読んでもらえば、低学年くらいでも楽しめる話もあります。ぜひ幅広い世代に親しんでもらい、少数民族に対する理解が自然に広がるといいなと思います。

（コプタ通信2016年8月号より　つきちゃんこと築山真希子）