2022/05/04(水)-05/29(日) | 10:30-18:00

【終了】アレックス・ランドルフのゲーム展

アレックス・ランドルフ生誕100年記念

Alex Randolph

偉大なゲームデザイナー、アレックス・ランドルフさんのご命日(4/27)とお誕生日(5/4)にちなみ、今年もランドルフさんのゲーム展を開催します。

前期(5/4-5/15):ランドルフと試作品

前期は、ランドルフさんの試作品にスポットを当てて展示をします。会場である百町森に来られない方のために、展示物に添えた解説文を掲載します。

はじめに

アレックス・ランドルフは、試作品を重視する作家でした。「テンポ・かたつむり」「すすめコブタくん」など、試作品のコマを写真で見ると、製品に極めて近いことに驚かされます。

彼はコマの試作品「原型」を完璧にすることを重要視していました。すぐに遊べるということ以外に、メーカーの変更を未然に防ぐ意味もあったようです。

彼は、自分のスケッチを、同じベニスに住むろくろ職人アンジェロに見せて加工してもらい、一緒に仕上げていったようです。アンジェロとの出会いは偶然で、何かをろくろで加工してもらおうという時に、「ベニスで彼以上のろくろ職人はいない」と教えてもらったのがきっかけでした。

今回の展示では、2冊の書籍(Die Sonnenseite、Zum 80. Geburtstag des Spieleerfinders)に掲載されている試作品の写真と、実際の商品を比べることで、彼がこだわった「原型」の完成度に触れていただきたいと思います。一方、ボードや箱にはこだわりがなかったので、メーカーの意向を汲み取れるかもしれません。

ベニス・コネクション

 前身となるゲーム「FATALER FEHLER(致命的な失敗)」の写真は、1988年版Spiele Kreis Wien(オーストリア)版なのか、試作品なのか不明。直線とL字が表裏になったタイルのシンプルなデザインは、いかにもランドルフらしい試作品にしか見えないが。1995年のドライ・マギア社(ドイツ)版では、美しい運河のデザインで登場した。これは、1996年のSpiel des Jahres(ドイツ年間ゲーム大賞)の特別美術賞を受賞した。イラスト、ロゴ、デザインは、ヨハン・リュッティンガー(ドライマギア経営者)とロルフ・フォークトの連名。ベニスの運河の底に堆積した藻を利用したAlga Cartaという特殊な紙を使用。

ハンド・イン・ハンド

「ハンド・イン・ハンド」は、1977年にFX Schmid社(ドイツ)で商品化された。右の試作品は、52枚あるように見える。イラストはランドルフ自身によるものかどうか不明。1985年にはセレクタ社(ドイツ)から、木製のタイルになってリメイクされた(展示品は2001年版)。木製のためか、36枚に減っている。

「ユニセフ」が制作した特別版のカードは48枚。いろいろな国の子どもたちが民族衣装を着たデザイン(タイトルも25ヶ国語)。ランドルフとセレクタ社への謝辞があるので、おそらく1985年以降のもの。

テンポ・かたつむり

ランドルフさん自身のスケッチと職人が作った試作コマ(上左)。ボードの試作は簡潔で明快。製品よりゴールまでが1マス長いのは興味深い(上右)。試作の箱にはこだわりがなく(右)、右上にカタツムリのイラスト、左下に署名、中央には仮のタイトル「IMMER LANGSAM!(いつもゆっくり!)」は、ゆっくり進んだカタツムリも勝ち、というルールを象徴している。1985年にラベンスバーガー社(ドイツ)で商品化。特大のコマが素晴らしい。

すすめコブタくん

2001年にドライマギア社(ドイツ)から発売されたすごろくの傑作。

こぶたのデザインもランドルフさんによるもので、試作品の形状は製品版とほぼ同じに見える。

8枚のゲーム盤はさらっと描かれているが、緑の草原に赤や黄の花があしらわれ雰囲気を醸し出している。また、道の曲がり具合や止まるマスの数は製品版と同じ。ほぼ完成品に近い試作といえる。

パッケージのデザインについては、日本語版「こぶたのおんぶレース」で解説していますが、イラストレーターのロルフ・フォークト、デザイナーのヨハン・リュッティンガー、編集者のカティ・カプラーがいい仕事をしています。

ガイスター

前身の「ジキルとハイド」は、1980年にWaddingtons社(英)から発売。1982年には、「ガイスター」としてビューテホルン社(独)からリメイクされ、オバケのモチーフは現在まで続いている。

試作品を見ると、コマが白と青の2色あり、「ジキルとハイド」の名残りが感じられる。また、箱のデザインはタイトル、ドアの向こうのオバケ、右の窓から覗くオバケ、右下のオレンジのロゴなど、製品に近い。ランドルフさんのデザインが元になった可能性がある。

インコグニト

1988年ミルトン・ブラッドレー社(ドイツ)発売。ベニスが舞台。

4人のエージェントは体型が大きく異なっていて、見分けが付きやすくなっている。 マスク(仮面)と帽子といった小物まで作り込まれている。製品版(ベニス・コネクション版、2001)では、プラスチックの組立て式になっている。

最も特徴的な「警告のしるし」の試作品の資料は見つけられなかった。

展示が始まる前の予告

今年はランドルフさんが生まれてちょうど100年の記念すべき年です。例年よりも少しでも充実させたいと計画中です。内容は未定ですが、概ね以下のようなアイデアです。

追記:後半の展示替えはできませんでした。ショーウインドーを使って展示を7月あたりから開催する予定です。

  • 前半(5/4-5/1529):メイン会場「ランドルフと試作品」、ショーウインドー「日本メーカーが海外に先駆けて商品化したランドルフ作品」
  • 後半(5/18-5/29):テーマ(案)「TwixT、ウミガメの島の変遷」、ショーウインドーなど

コロナがなければ、「ガイスター大会」や「ランドルフ感謝祭」のような、ランドルフさんのゲームで遊ぶイベントをやりたいのですが、残念です。せめて、何かオンラインでやれたら、などとは思っています。

これまでのランドルフさんのイベント

名称:
アレックス・ランドルフ展
開催日:
2022/05/04(水)-05/29(日)
時間:
10:30-18:00
場所:
百町森店内
料金:
無料

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