ネフ社創立50周年記念パーティー(2)
さあ、いよいよスイスだぞ〜
2005年10月 相沢康夫
チューリッヒ空港に降り立った私達を出迎えてくれたのは、クリストフ・エンデ君、26歳。ベルン大学で日本文化を勉強し、日本にも留学経験のある好青年である。わずかに1年に満たない日本滞在期間を感じさせないほど、日本語が上手い。私達はすぐに打ち解け、私は彼を「クリちゃん」と呼び、いろいろな話をした。中でも日本の政治についての話は、熱を帯びてくるに従い、私はただただ感心してしまった。我が長男と年もそう離れていないのに、どうして、この青年はこんなにも大人なのだ? 日本の若者が未熟なのか?・・・てなことを考えているうちに、電車はネフ社のある町、ツォフィンゲンに到着した。
ホテルでチェックインの後、クルト・ネフ氏自らが車でお迎えに来てくれた。ミツビシの愛車に乗って・・・。「日本車で(めずらしくなくて)ゴメンネ。」とさっそくのネフさんらしいお気遣い。本当にいつお会いしても、こちらの気持ちをなごませ、暖かくしてくれる方である。ネフ氏の自宅は、外から見ると、日本の普通のアパートと変わらない感じだった。でも一歩中に入ってビックリ。ミニ・ミュージアムなのである。壁面と棚のいたる所に、ネフ氏がこれまで集めたオブジェや工芸品、おもちゃが並び、そのどれもが全て輝くばかりの個性を放っている。日本のおもちゃ作家のものもあり、ネフ社で作ったプレミアム特注品あり、製品化に至らなかった試作品あり。日本製と思しき陶器なんかもある。私はその一つ一つに目を奪われ、挨拶もそこそこに「これ写真に撮らせてもらっていいですか?」と礼を欠くありさま・・・。
お茶をいただきながら、しばらくの世間話の後、ネフさんは「そう言えば日本は選挙で与党が圧勝したがどうか?」とか「郵政民営化に対してアイザワはどう思うか?」とか、はては「コイズミをどう評価する?」と、またまた政治の話になってゆく。ほんと、クリちゃんといい、ネフさんといい他の国のことに関心があるんだな、とちょっとビックリ。私は、この日、日本にいる時よりも、はるかに多くの政治の話をしたように思う。(そう言えば、スイスの首相って誰だっけ?)と自問してみる。ネフさんは小泉氏の名前を知ってたけど・・・。スイスにお邪魔している私がそれを知らないのは、ちょっと恥ずかしいかもね。
さて、ネフ氏はこの後、自らがキッチンに立ち、料理を作ってくれた。すごい豪華という訳ではないけれど、本当に心のこもった手作りの料理に舌づつみ。前菜、メインディッシュ、コーヒーとデザートをいただきつつ、デザインの話、経営の話、たくさんの話をさせてもらった。(詳細は「クルト・ネフとの最後の対話」にて)最後に彼が今思索中のレプリカ4点を見せてもらった。「ぜひ、アイザワの意見を聞きたかった」とのこと。光栄です。落とし系玩具あり、音楽系あり、組み木あり、本当にその多彩さに驚かされた。夜も更け、明日が本番ということもあり、ネフ氏宅を辞した。とは言え、11時を廻ってたけど。
コプタ通信2005年11月号 相沢康夫 AIZAWA yasuo