ネフ社創立50周年記念パーティー(3)

パーティ当日「積み木ショー」

2005年10月 相沢康夫

いよいよこの日は、午後3時から、ネフ社創立50周年記念パーティーである。私は、前日のネフ氏宅のおよばれに興奮してか、時差ボケも手伝って前の晩あまり眠っていなかったにもかかわらずビンビンに元気いっぱい。妻はといえば、彼女も同じく元気な様子。「じゃ、ツォフィンゲンの町でもブラつこうか?」実はちょうど一年前にここに来ているので、余裕の私であった。町の象徴である時計塔、教会、古く美しい街並みが続く。秋のスイスはもう少し寒いかと思いきや、上着は全く必要なく、シャツも腕をまくるほど暖かい。あっちへ行き、こっちの店に入り、お茶してまた向こうへ歩いてみる。カメラを構えていると、同じくカメラを持った、たぶんドイツ人が「シェーン」(美しいねぇ)と声をかけてくれる。「ヤー、ゼアグート」(ほんといいね)と答える。

昼食の後、クリちゃんと待ち合わせをして、ホテルからネフ社まで歩いていった。昨年来た時は団体だったので、バスで移動したのだが、なんとまぁ歩いて行ける距離にあったのね。3時少し前、ネフ社の前で海外営業部の責任者ルーティスハウザー氏が迎えてくれた。彼には昨年も会い、愛知万博のため来日した時にもいっしょに食事をしたり、ネフ社の積木でガンガン遊ぶ保育園(浜松市)に案内したりしていて、「ルーティー」と呼ぶほどの間柄なのだ。「元気そうでなによりなにより」。おお、向こうからやって来るのはハイコ・ヒリック氏じゃないか。「やぁー久しぶりぃ」。彼は一時期、若くしてネフ社のチーフ・デザイナーでもあったが、今はフリーでネフ社と関わっていた。チーフだった頃は、ホントに切れ者で、正直、クールすぎるきらいがあったのだが、人が違うようなこの満面の笑みはなんだろう?妻はハンサムなハイコにクラッときた様子。「おい、よく見ろよ。隣にメチャかわいい奥さんがいるじゃないか」と、冷静に諭すボク。会う人ごとに「ダス イスツ マイネ フラウ」(これ、うちのカミさん)と、妻を紹介しつつ、いざパーティー会場へ・・・。

パーティー会場には、これまた大勢の知り合いの顔があった。ドイツ木製玩具メーカー最大の老舗、デュシマ社の社長ルル・シフラーさん。グラマーで迫力のある、とてもチャーミングな女性だ。フレーベルの考案した積み木の原理を、子どもが遊びやすい量とサイズで製品化を果たした、クルト・シフラー氏の娘さんでもある。「オオ、アイザワサーン」と、いつものカタコト日本語で私に笑顔をなげかけてくれた。

次に会ったのは、旧東ドイツにあるジーナ社の社長、バーバラ・ザイドラーさん。ジーナ社はとてもていねいで誠実な物づくりをするメーカーで、私の作品も3点製品化してくれている。また、来春、私の新作も出る予定になっており、彼女とも話が盛り上がる。私が試作を作ってから2年近くの歳月が経っていたが、数々の問題点をひとつひとつクリアし、とうとう製品化にこぎつけてくれた。デザイナーがいて、メーカーがあって、初めて製品は世に出る。こういうメーカーと知り合えて本当によかったと私は思う。そう言えばジーナ社を私に紹介してくれたのも、ネフ氏だったな、と改めてネフ氏に感謝。

カテリーナ・キーナーさんとも一年ぶりの再会ができた。彼女は、自社(キーナー社)で、ネームカードやロット、メモリーなどを製品化し、ネフ社ではおなじみの「キーナーモザイク」を作ってもらっている。(ちなみにこの製品を私は心ひそかに『世界一美しいおもちゃ』と呼んでいる。)いつも明るく、場をなごませてくれるキーナーさん、またお会いできて本当にうれしかった。他にも、ケルナースティックで有名なケルナー夫妻、フランスのおもちゃ屋さん「バス&バス」のオーナーなどにも思わぬ再会ができ、もう絶好調の私なのであった。

ネフ社の工場見学もさせてもらった。私はこれで都合3度目になるのだが、いつ見ても清潔で整然とした工場である。「ああ、ここであの世界一のグレードの積み木やガラガラ類が作られているんだな」とつくづく思う。塗装には6工程を必要とするとのこと。さすがです。

ネフ社の地下には、クルト・ネフ個人工房があり、これまでネフ社で作られた作品がほぼ全て揃っている。いつもながら廃番製品によだれが出る。昨日のネフ氏宅のミュージアムとはまたちょっと違った、ここもミュージアムには違いない。それほど、ネフ社で作られた製品たちは、一様に皆、アートであり、オブジェなのだ。

ルーティーとハイコの強い勧めで、積み木パフォーマンスショーもさせていただいた。何種類かの積み木を使って、あれこれ組み替えつつギャラリーとの掛け合いを楽しむ・・・という私のオリジナル芸である。まずは、自己紹介を兼ねて自作の「ヴィボ」で遊ぶ。「日本からやって来ました相沢です。ネフ社創設50周年おめでとうございます」挨拶やトークは隣でクリちゃんが全てドイツ語に通訳してくれる。とってもやりやすい。次にネフ社創設者クルト・ネフ氏を尊重して「ネフスピール」を手に取り、ちょっと時間をかけていろんなパターンを作る。やがていつしか私の周りには大勢の人だかり。拍手もわき始める。ネフさんもとても真剣に見てくれている。次に手に取ったのはクラーセン氏の代表作「アングーラ」。大人のネフファンは、この積み木にハマる人がすごく多い。シンプルゆえに奥が深いのである。指定された時間が来たのでここで終了。・・・と思いきや、会場はアンコールの嵐。「キュービックスで遊んでみてくれ」とか「セラもやって」等々。その後も様々な積み木を手に取り、遊びまくる。盛大な拍手をいただき、大好評のうちに積み木ショーは終了した。ルルさんから「パーフェクト!」というお褒めの言葉をいただいたりして、終わってほっとするボク。

コプタ通信2005年11月号 相沢康夫 AIZAWA yasuo

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ネフ社創立50周年記念パーティー(3):ツォフィンゲンの街並 ネフ社創立50周年記念パーティー(3):ツォフィンゲンの街並 ネフ社創立50周年記念パーティー(3):ネフ社玄関 ネフ社創立50周年記念パーティー(3):カテリーナ・キーナーさん(中央)と・・かかなりうれしいボク。 ネフ社創立50周年記念パーティー(3):  ネフ社創立50周年記念パーティー(3):  ネフ社創立50周年記念パーティー(3):  ネフ社創立50周年記念パーティー(3):  ネフ社創立50周年記念パーティー(3): 

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